サウナの木材選び。
樹種ごとの特性と、適材適所の考え方。
サウナ室の木は、香り・肌触り・耐久性のすべてに関わる。どこに、何を使うかが問われる。
サウナ室の木材に求められる性能
サウナ室に使う木材には、一般の建築材とは異なる性能が求められます。
低熱伝導率。サウナ室の温度は80〜100℃に達しますが、木製のベンチに座っても火傷はしません。これは木材の熱伝導率が低いためです。金属やタイルは同じ温度でも触れた瞬間に火傷しますが、木材は体温との熱交換がゆっくり進むため、体感上は「温かい」程度に感じます。この性質は針葉樹(ヒノキ、杉、スプルースなど)で特に顕著です。密度の高い広葉樹(オーク、チークなど)は熱伝導率が高いため、サウナのベンチには向きません。
耐水性・耐腐朽性。ロウリュを行うサウナ室は、壁やベンチが頻繁に水分にさらされます。使用後に乾燥させるとはいえ、木材自体が水分に対して耐性を持っていることが重要です。ヒバやサーモウッドはこの点で優れています。
寸法安定性。高温と湿度の変化を繰り返す環境では、木材の膨張・収縮が激しくなります。寸法安定性の低い木材は、反り・隙間・割れの原因になります。サーモウッドは熱処理によってこの問題を大幅に改善しています。
ヤニ(樹脂)の少なさ。マツやスプルースなどの樹種は、高温になるとヤニが溶け出すことがあります。ヤニは粘着性があり、肌に付くと不快です。乾燥が十分でない材や、心材と辺材の使い分けが甘い材ではこの問題が起こります。
岩手ヒノキ — 香りと肌触りの王道
ヒノキは日本のサウナで最も人気のある樹種のひとつです。岩手県南部で育つ岩手ヒノキは、寒冷地で時間をかけて成長するため、年輪が詰まっており、木目が美しく、強度があります。
特長。華やかで上品な芳香。肌触りが滑らかで、裸で座るベンチに最適。適度な油分があり、水はけが良い。心材は耐朽性が高い。
サウナでの適所。壁面の羽目板、ベンチの座面、天井。いわば「目に見える部分、肌に触れる部分」がヒノキの居場所です。サウナ室に入った瞬間、ヒノキの香りが出迎えてくれます。ロウリュの蒸気が木肌に触れると、香りがさらに立ちます。
注意点。ヒノキは耐水性のある樹種ですが、常時水がかかる場所(床、排水口まわり)ではヒバに劣ります。また、辺材(木の外側の白い部分)は心材に比べて耐朽性が低いため、サウナ室には心材を使うのが基本です。
岩手ヒバ — 水に強い、カビに強い
ヒバ(ヒノキアスナロ)は、青森ヒバで知られる日本の銘木です。岩手県北部でも良質なヒバが産出されます。ヒバの最大の特長は、天然の抗菌・防カビ成分「ヒノキチオール」の含有量です。ヒノキの約10倍のヒノキチオールを含み、カビや細菌の繁殖を天然の力で抑えます。
特長。抜群の耐水性と耐腐朽性。ヒノキチオールによる天然の抗菌・防カビ効果。凛とした清涼感のある香り。シロアリに強い。
サウナでの適所。床材、ベンチの脚(水が溜まりやすい構造部)、ヒーター周辺の壁面、排水口まわり。いわば「水がかかる場所、湿気がこもりやすい場所」がヒバの居場所です。ロウリュの水が石で蒸発しきらずに床に流れることがありますが、ヒバの床材ならその水分に耐えます。
注意点。ヒバの香りは好みが分かれることがあります。ヒノキに比べてやや薬草的な香りで、これを「清潔感がある」と感じる方と「強い」と感じる方がいます。壁面全面をヒバにすると香りが強くなりすぎることがあるため、KUUTA saunaでは床と構造部にヒバ、壁と天井にヒノキ・杉という組み合わせを基本にしています。
南部杉 — やさしい木肌と断熱性
杉は日本で最も身近な木材です。岩手県の南部杉は、まっすぐな木目と赤みのある美しい色合いが特長です。針葉樹の中でも特に密度が低く、断熱性に優れます。
特長。やさしく甘い香り。熱伝導率が非常に低く、ベンチに座っても熱さを感じにくい。軽量で加工しやすい。コストパフォーマンスが良い。
サウナでの適所。天井材、壁面の一部、ベンチの背もたれ。杉は熱伝導率が低いため、高温のサウナ室でも背中を預けたときに快適です。また、天井に杉を使うと、断熱効果とやわらかな香りを両立できます。
注意点。杉はヒノキやヒバに比べて軟らかく、傷がつきやすい性質があります。ベンチの座面(荷重がかかる場所)にはヒノキのほうが耐久性で勝ります。また、水がかかる場所ではヒバほどの耐水性はないため、床材には向きません。
サーモウッド — フィンランド発の改質木材
サーモウッドは、木材を高温(180〜230℃)の蒸気中で熱処理する技術です。フィンランドで1990年代に開発され、サウナ用途に広く採用されています。ハルビアの既製サウナルームにもサーモウッド(サーモリー社のサーモパイン、サーモアスペンなど)が使われています。
特長。寸法安定性が天然木の2〜3倍。反り・割れ・隙間が極めて少ない。耐腐朽性が大幅に向上。含水率が低く、カビに強い。均一なチョコレートブラウンの色合い。
サウナでの適所。壁面、天井、ベンチ、いずれにも使えるオールラウンダーです。特に、寸法安定性が求められるドア枠や窓枠には最適です。既製サウナルームではサーモウッドが標準仕様であることが多く、品質のばらつきが少ないのも利点です。
KUUTA saunaでの位置づけ。KUUTA saunaはオーダーメイドサウナとして、岩手の天然木(ヒノキ・ヒバ・杉)を使うことをアイデンティティにしています。サーモウッドは優れた素材ですが、「岩手の森の香りのするサウナ」を求める方には天然木を、「寸法安定性と均一性」を重視する方にはサーモウッドを提案します。ハルビアの既製サウナルームはサーモウッド仕様です。
適材適所 — KUUTA saunaの木材の使い分け
KUUTA saunaでは、サウナ室の部位ごとに最適な樹種を使い分けています。
床:岩手ヒバ。ロウリュの水が流れ落ちる場所。常に湿度が高く、カビのリスクが最も高い部位です。ヒバの抗菌力と耐水性が最も活きる場所です。
ベンチ座面:岩手ヒノキ。裸の肌が直接触れる場所。滑らかな肌触りと華やかな香り、適度な油分による水はけの良さ。ヒノキの長所が最も発揮される場所です。
ベンチ脚・構造材:岩手ヒバ。床に近く、湿気がこもりやすい部位。構造材は目に見えませんが、サウナ室の耐久年数を決定づける部位です。
壁面:岩手ヒノキまたは南部杉。好みの香りと木目で選んでいただけます。ヒノキは華やかさ、杉はやさしさ。どちらも針葉樹で熱伝導率が低く、壁に触れても不快な熱さを感じません。
天井:南部杉。最も高温になる部位ですが、直接触れることはありません。杉の断熱性が天井裏への放熱を抑え、サウナ室の保温効率を高めます。
ドア枠・窓枠:サーモウッドまたは岩手ヒバ。寸法変化が大きいとドアの開閉に支障をきたすため、寸法安定性の高い素材を使います。
この使い分けは一例であり、お客様の好みや予算に合わせて柔軟に対応します。「壁も天井もすべてヒノキ」「床以外すべて杉」といったご要望にも応じます。岩手の木ページでは、実際に使っている木材の写真をご覧いただけます。
木材の経年変化とメンテナンス
天然木のサウナ室は、使い込むほどに表情が変わります。これは「劣化」ではなく「経年変化」であり、天然木ならではの楽しみです。
色の変化。ヒノキは白みがかった明るい色から、徐々に飴色に変化します。杉は赤みが増し、深みのある色合いになります。サーモウッドは紫外線でやや退色しますが、サウナ室内は紫外線が少ないため変化は穏やかです。
香りの変化。新しいサウナ室は香りが強いですが、半年〜1年で落ち着きます。ロウリュの蒸気が木肌に触れると、使い込んだサウナでも香りが蘇ります。ヒバの香りは特に持続性が高く、数年経っても清涼感が残ります。
日常のメンテナンス。サウナ室の木材に塗装は基本的に不要です。使用後に換気をしっかり行い、室内を乾燥させることが最も重要なメンテナンスです。ベンチの表面が汚れた場合は、サンドペーパー(#180〜#240)で軽く研磨すると、新しい木肌が現れます。
定期メンテナンス。年に1〜2回、ベンチの座面にサウナ専用の浸透性保護剤(パラフィンオイルベースのもの)を薄く塗ると、水はけが良くなり、汗や汚れの染み込みを防げます。D'STYLEではメンテナンスサービスも行っています。
サウナの木材選びは、香り・肌触り・耐久性のバランスです。どの木にもそれぞれの長所があり、「最強の一種類」は存在しません。だからこそ、適材適所。濡れる場所にはヒバを、肌に触れる場所にはヒノキを、断熱したい場所には杉を。
KUUTA saunaは、岩手の木で一台ずつ設計するオーダーメイドサウナです。ショールームでは、実際の木材サンプルを手に取っていただけます。香り、手触り、色合い。画面では伝わらない感覚を、ぜひ確かめに来てください。
サウナの木材について、よくある質問
ここまで読んでくださった方へ
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岩手の木で、一台ずつ設計する。
D'STYLEは岩手県盛岡市でサウナと薪ストーブを手がけてきた施工会社です。薪ストーブの施工で培った木材の知識を、サウナ室の設計に活かしています。オーダーサウナKUUTA saunaでは、樹種の選定から加工・施工まで一貫対応します。
TEL 019-681-2477(9:00〜17:00・水曜定休)