青森県三戸郡五戸町は、古くから馬産地として知られてきた農村地帯だ。五戸川沿いの静かな町並みの中に、地域住民が日々の疲れを癒す銭湯サウナ「新たんぼのゆっこ」がある。「たんぼのゆっこ」という名前には、田んぼのほとりにある湯処、という素朴な情景が込められているようだ。農業・畜産・林業に従事する人々が多い五戸町において、この銭湯は働く身体を労わる場所として機能してきた。
午後12時から夜9時までの営業時間は、仕事を終えた人々が立ち寄るのに適した設定だ。大人450円という料金は、地域の銭湯相場に沿ったもので、日常使いの温浴施設として敷居を低くしている。五戸町のように農村部の小さな町においても、こうした銭湯サウナが存続していることは、東北の温浴文化の底の厚さを示している。
90℃超のサウナ温度――銭湯サウナの本気
新たんぼのゆっこのサウナは、男湯が92℃、女湯が90℃という高温設定だ。「銭湯サウナ」というと低温・ぬるいサウナを想像する人もいるかもしれないが、この施設の設定温度は専門サウナ施設に引けを取らない。92℃という温度は、体感ではかなりの熱さで、入室から2〜3分で汗が噴き出す水準だ。
東北の銭湯サウナは概して温度が高めに設定される傾向がある。これは東北の人々の「熱いサウナ好き」という文化的背景もあるが、農業・漁業・林業など身体を使う仕事で凝り固まった筋肉を十分に解すには、それなりの温度が必要という実用的な理由もある。高温サウナで大量に発汗することで、乳酸の排出と血行促進が促され、翌日の身体の回復力に差が出る。
五戸の銭湯でこの温度は嬉しい驚き。92℃のサウナはきちんと熱くて、水風呂もちゃんと冷たい。外気浴もできて、ちゃんとととのえる。地元民に交じりながらいい時間が過ごせた。
18℃台の水風呂と外気浴――農村のサウナ体験
男湯18.8℃、女湯18℃という水風呂の温度は、適切な冷却効果を持つ水準だ。人体への快適な冷却は15〜20℃の範囲とされており、この施設の水風呂はその中間域に位置する。熱すぎず、かつサウナ後の身体を十分に冷やしてくれる温度帯だ。
注目すべき点は外気浴スペースが設けられていることだ。都市部の銭湯では外気浴スペースを確保することが難しく、サウナ愛好家にとって物足りない施設も少なくない。五戸町のような農村部の銭湯は敷地に余裕があることが多く、外に出て外気に触れながら休めるスペースを設けやすい。サウナ→水風呂→外気浴という理想的な3セットが完結できる施設構成は、本格的なサウナ体験を求める人にも十分応えるものだ。
五戸町という場所――馬と農業の町の温浴文化
五戸町は青森県南部、三戸郡に属する農業・畜産の町だ。人口約1万6000人の小さな町だが、日本の馬産地として江戸時代から続く歴史を持つ。「五戸」という地名自体が古代の馬牧(牧場)の名残とも言われており、今日でも馬術競技や乗馬関連施設が地域に根付いている。
農業と畜産が主な産業である五戸町では、季節を問わず屋外での肉体労働が続く。春の田植えから始まり、夏の草刈り、秋の収穫、冬の除雪まで、身体を動かし続ける農村生活において、銭湯は単なる入浴場所ではなく、地域のコミュニケーションの場でもある。隣人と湯に入りながら農作業の話をし、馬の状態について語り合う、そういった日常的な交流の場として、新たんぼのゆっこは機能してきた。
FACILITY DATA
| 施設名 | 新たんぼのゆっこ |
|---|---|
| 所在地 | 青森県三戸郡五戸町 |
| 営業時間 | 12:00〜21:00 |
| 料金 | 大人450円 |
| サウナ温度 | 男湯92℃ / 女湯90℃ |
| 水風呂温度 | 男湯18.8℃ / 女湯18℃ |
| 外気浴 | あり |
| ロウリュ | なし |
東北の農村銭湯サウナが持つ独自の価値
全国的にサウナブームが続く中、話題になりやすいのは都市部の新業態施設や温泉地のラグジュアリー施設だ。しかし、東北の農村地帯にある小さな銭湯サウナには、そういった施設とは別種の価値がある。高温サウナ、適切な水風呂、外気浴という三要素を大人450円で提供するシンプルな構成は、サウナ本来の機能に忠実だ。
東北の農村でこういった施設が長年続いている背景には、地域住民の実用的なニーズがある。観光客を意識したサービスではなく、地元の人々が毎日使うためのインフラとして維持されてきた施設の空気感は、都市の施設では感じられないものだ。五戸町に立ち寄る機会があれば、ぜひ地元の人々と一緒に新たんぼのゆっこの湯に入ってみてほしい。
農家のおじいさんたちが常連で、サウナの使い方が昔ながらで面白かった。難しいことは考えず、ただ熱くなって冷やして外の空気を吸う。それだけで十分だと気づかせてくれる場所。
D'STYLEから見た農村型銭湯サウナの可能性
私たちD'STYLEは岩手・青森・秋田の農村部にも多くのお客様を持ち、自宅サウナの施工依頼をいただくことがある。農村では都市部と異なり、敷地に余裕がある家屋が多く、庭や離れを利用したサウナ小屋を作りやすい環境がある。新たんぼのゆっこのような施設の存在は、東北の農村にはサウナ文化の土壌があることを示している。
HARVIAのサウナヒーターは、農村の自宅サウナにも多く採用されている。薪を使ったストーブタイプは特に農村部での人気が高く、自分で薪割りをして火を起こし、ロウリュするというサウナ体験は、農村生活の延長線上に自然に溶け込む。五戸のような農村地帯でも、自宅サウナへの関心は確実に高まっている。