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SAUNA GUIDE AOMORI / 南津軽郡藤崎町

ときわ温泉(藤崎町)
ふじリンゴの里に、常緑の温もり

by 橋本大治(D'STYLE) | 2026年10月

「ときわ」とは常磐・常盤とも書き、常に緑が絶えない常緑の様子を意味する言葉だ。移り変わる季節の中でも変わらず緑であり続けるもの——松や杉のような常緑樹のイメージでもあるが、変わらぬ温もりで人々を迎え続ける温泉の在り方を表す言葉としても、これほど適切なものはないと思う。藤崎町のときわ温泉を初めて訪れたのは、秋のリンゴ収穫の季節だった。道の両側に赤く実ったリンゴ畑が広がる中を車で走り、この温泉へとたどり着いた時の記憶は、今も鮮やかに残っている。

藤崎町と「ふじ」リンゴの誕生

藤崎町を語る上で外せないのが、「ふじ」リンゴとの関係だ。現在、世界で最も広く栽培されているリンゴ品種のひとつである「ふじ」は、1930年代から農林省園芸試験場東北支場(現・農研機構りんご研究所)の藤崎試験地で交配研究が始まり、1962年に正式に品種登録された。名前の「ふじ」は、藤崎の「ふじ」と富士山にかけた命名だと言われている。

つまり藤崎町は、世界中で食べられているふじリンゴの「ふるさと」なのだ。スーパーの棚で見かけるあの赤い果実のルーツが、この南津軽の小さな町の研究所にある。そのことを知ってから藤崎の風景を見ると、一本一本のリンゴの木が全く違って見えてくる。何十年もの品種改良の積み重ねと、農業研究者の粘り強い努力が、この土地の大地に根ざしている。

リンゴ畑を背景に、ときわ温泉へ

10月の藤崎町は、リンゴ農家の最繁忙期だ。収穫を待つ赤い実が枝もたわわに下がり、農家の人々は朝から晩まで収穫と選別作業に追われる。そういう繁忙期の合間に体を休める場所として、ときわ温泉のような地域の銭湯が果たしてきた役割は大きい。私が訪れた時も、農作業を終えたらしい年配の男性たちが何人か先にいて、静かに湯船に体を沈めていた。

サウナ室は88℃。心地よい熱さで、体の芯からじわじわと温まる感覚がある。農作業で固まった筋肉が少しずつほぐれていくのを感じながら、私は目を閉じた。サウナの熱気の中で、外の秋の冷気と、リンゴの赤い色が頭の中を巡る。日が短くなり、空気が澄んでくる10月の津軽は、サウナをより深く楽しめる季節でもある。

17℃の水と、平川の流れ

水風呂は17℃。藤崎町は平川川の流域に位置し、その清冽な水が農業を支えてきた。平川の名は平川市にも引き継がれているが、この水系は南津軽の農業の生命線だ。農業用水として、生活用水として、そして温泉の水風呂として——水はこの土地のあらゆる場面で欠かせない存在だ。

17℃の水風呂はちょうど良い冷たさで、体が「熱い」から「心地よい」に切り替わる瞬間を感じやすい温度だ。私は水風呂から上がり、ととのいの場所に横になった。体の表面では微かな汗が引いていき、体の内側には静かな温もりが残っている。サウナ上がりのその浮遊感の中で、窓の外の秋の空を眺めながら、ふじリンゴの誕生のことを考えた。何十年もの交配実験と研究の積み重ねが、最終的にひとつの世界的な果実を生んだように、人の営みの積み重ねが思わぬ形で世界と繋がることがある。

津軽の秋の豊かさ

藤崎町周辺の秋は、目に映るものすべてが実りに満ちている。リンゴ畑だけでなく、稲の収穫もこの時期に重なり、田んぼの黄金色とリンゴの赤が秋の津軽平野を染め上げる。弘前から少し南下するだけで、この豊かな農村風景が広がっている。観光地化された弘前の桜とは異なる、農業の営みが作り出す自然の美しさがそこにはある。

私はこの地域を訪れるたびに、農業者の仕事のスケールの大きさに圧倒される。リンゴの木一本が実をつけるまでに何年もかかり、品種改良ともなれば何十年という単位で研究を続けなければならない。そういう長い時間軸で自然と向き合う農業の在り方は、ものを作る仕事に関わる私にも、多くのことを考えさせてくれる。ときわ温泉の「常緑」という名前も、その変わらぬ営みへの敬意のように聞こえてくる。

弘前からのアクセスと組み合わせ方

藤崎町は弘前市から車で20分ほどの距離にある。弘前観光と組み合わせて訪れることも十分可能だ。特に秋のリンゴ収穫の時期は、リンゴ畑の美しさを楽しみながら農道を走ることができ、道の駅でリンゴを買い、そのまま藤崎町でときわ温泉に浸かる——そういうコースが私のお気に入りだ。

入浴料500円という価格設定は、農村の温泉らしい親しみやすさだ。このエリアに暮らすリンゴ農家の人々が、毎日でも気軽に利用できる場所として機能している証拠でもある。「ときわ」という名前の通り、どんな季節に来ても変わらぬ温もりで迎えてくれる場所。ふじリンゴが世界中で愛され続けるように、この温泉もまた藤崎の人々に変わらず愛され続けてほしいと、私は湯船に浸かりながら願った。

サウナ88℃
水風呂17℃
入浴料500円〜

FACILITY DATA

施設名ときわ温泉
所在地青森県南津軽郡藤崎町
入浴料大人500円〜
サウナ温度約88℃
水風呂温度約17℃
定休日施設にご確認ください
営業時間施設にご確認ください

ふじリンゴの生まれた土地で、常緑という名を持つ温泉に浸かる。そこには津軽の農業文化が持つ、変わらぬ誠実さと温もりが凝縮されている。秋のリンゴの赤と温泉の白い湯気が交差する藤崎町の風景は、私の中で忘れがたい東北の原風景のひとつとして残っている。次回は春の花の季節に、リンゴの花が咲く頃に来てみたいと思いながら、ときわ温泉を後にした。

橋本大治
橋本大治(有限会社D'STYLE 代表)

盛岡市を拠点に、HARVIAサウナヒーターの販売・施工・コンサルティングを30年以上手がける。フィンランド・エストニア・リトアニアなど北欧・バルト諸国のサウナを定期的に視察。岩手・青森・秋田を中心に東北各地のサウナ施設を実際に訪れ、地元の空気を体で知っている。

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