屏風山という名は、山が屏風のように連なる地形から来ているのだろう。つがる市の屏風山地区は、津軽平野の中でも少し起伏のある地形の場所にある。そこに湧く温泉が屏風山温泉で、390円で日帰り入浴とサウナが楽しめる施設だ。男性サウナは45℃、女性サウナは23℃という、青森県の低温サウナの中でも特に穏やかな温度設定になっている。
45℃というサウナ温度は、通常の「高温サウナ」の基準からすると低いと感じるかもしれない。しかし、こうした低温サウナには独自の文化と楽しみ方がある。むつ市の菊の湯(男44℃)や碇ヶ関温泉会館(男55℃)など、青森県には低温サウナを維持している施設がいくつかある。それぞれの温度に対応する体験があり、45℃の屏風山温泉も例外ではない。
つがる市と縄文文化の土地
つがる市は、2021年の「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界遺産登録で一気に知名度が上がった地域だ。市内には亀ヶ岡遺跡をはじめとする縄文時代の遺跡が多数あり、縄文時代晩期の土器や土偶が数多く出土している。
亀ヶ岡遺跡は、縄文時代晩期(約3,000年前)の遺跡で、独特の縄文晩期文化「亀ヶ岡文化」の中心地とされている。目のような穴が開いた「遮光器土偶」は亀ヶ岡遺跡の出土品として有名で、日本の縄文文化を象徴するアイコンのひとつだ。
屏風山温泉があるつがる市の農業地帯は、こうした縄文文化の土地と重なっている。農地を耕すと縄文時代の土器のかけらが出てくることもある——そういう場所だ。数千年前から人々が住み続けてきた土地で、温泉に浸かるという行為には、不思議な連続性を感じる。
45℃低温サウナの楽しみ方
45℃のサウナは、「じわじわ温まる」体験だ。高温サウナでは入室してすぐに身体が反応するが、45℃では10〜15分以上かけて徐々に身体が温まっていく。この緩やかな温まり方は、高温サウナが苦手な人や、血圧が高めで急激な温度変化を避けたい人にとって、より安全で快適な選択肢になる。
45℃のサウナの常連は、長時間ゆっくりと汗をかくことを好む人が多い。会話しながら、あるいは静かに目を閉じながら、じっくりと身体の深部まで熱を通す。その後に外の空気(または室内の涼しいエリア)に出ると、じんわりとした整い感がある。高温サウナのような爆発的な爽快感とは異なるが、これも「整い」のひとつの形だ。
45℃の世界は、高温サウナとは別の時間軸で動いている——そこにある生活の匂いと、ゆっくりと溶けていく疲れ。
女性サウナが23℃という設定は、サウナというよりミストサウナに近い温度帯だ。「スチームサウナ」や「低温多湿サウナ」として設計されている可能性がある。湿度が高い状態での低温サウナは、皮膚への刺激が少なく、美容目的で使う人も多い。
農業地帯の温浴施設としての屏風山温泉
つがる市は稲作と野菜、そしてリンゴの産地だ。農業従事者が多い地域では、身体を使う仕事の疲れを取ることが温浴施設の主な役割になる。屏風山温泉も、そういった農村の日常に根ざした施設として機能している。
390円という価格は、地域住民が日常的に利用できる料金設定だ。週に何度か訪れる常連が多く、サウナも「週1回の習慣」として使われている——そういう使われ方がこうした農村の温浴施設の典型だ。
季節によって施設の雰囲気も変わる。農繁期(春の田植え・秋の収穫)には農作業帰りの利用者で混み合い、農閑期には時間をかけてゆっくり利用する人が増える。45℃というサウナの温度設定は、長時間ゆっくり使う農閑期の過ごし方にも合っている。
同市の稲垣温泉ホテル花月亭との比較
同じつがる市内にある稲垣温泉ホテル花月亭は、男性サウナが100℃・女性70℃という対照的に高温の施設だ。屏風山温泉(男45℃)と花月亭(男100℃)——この二施設を比較するだけで、「サウナ温度」という概念の幅広さがわかる。
サウナ温度の好みは人によって大きく異なる。45℃が「ちょうどいい」と感じる人もいれば、「物足りない」と感じる人もいる。100℃を「本物のサウナ」と感じる人もいれば、「熱すぎて辛い」と感じる人もいる。つがる市には、その両端が揃っているというわけだ。
旅行者として両施設を1日で体験する——午前中に屏風山温泉でゆっくりと45℃サウナに入り、午後に稲垣温泉ホテル花月亭で100℃の高温サウナを体験する、という旅程もユニークかもしれない。ただし体への負担も考え、無理なく計画してほしい。
アクセスと周辺の見どころ
屏風山温泉へのアクセスは、五所川原市から車で30分前後。つがる市木造地区(市役所・亀ヶ岡遺跡周辺)から15〜20分程度の場所にある。公共交通機関でのアクセスは限られているため、車でのアクセスが基本になる。
周辺の見どころとして、亀ヶ岡遺跡と縄文住居展示資料館カルコ(つがる市)は外せない。世界遺産の構成資産として整備されており、縄文時代の住居跡や出土品を見学できる。屏風山温泉とセットで訪れれば、つがる市の歴史と自然を1日で体験できる。
FACILITY DATA
| 施設名 | 屏風山温泉 |
|---|---|
| 住所 | 青森県つがる市 |
| 種別 | 日帰り温浴施設(温泉・サウナ) |
| 料金(日帰り) | 390円 |
| サウナ | 男45℃ / 女23℃ |
| 水風呂 | 要確認 |
| 男女 | 男女あり |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 五所川原市から車で約30分 / 木造駅よりタクシー |
| 備考 | 営業日時・休館日は事前確認推奨 |
縄文遺跡の土地で、390円の低温サウナに入る。そこにある日常の温かさと、農村の時間の流れが、都市部のサウナとは異なる体験をもたらす。つがる市を訪れる機会があれば、屏風山温泉のゆっくりとした低温サウナを体験してみてほしい。