薪サウナは「スイッチを入れれば温まる」電気サウナとは違います。着火して、薪を継ぎ足して、温度を見ながら育てていく。その90分の過程に、薪サウナの醍醐味があります。初めて薪サウナを焚く方でも失敗しないように、準備から着火・温度管理・ロウリュ・消火まで、順を追って解説します。
薪サウナは「焚き火」の延長
薪サウナストーブは単なる加熱器具ではなく、焚き火の楽しさをサウナに取り込んだものです。炎の揺らぎ、薪のはぜる音、木が燃えるにおい——これらは電気ストーブでは再現できない体験です。着火から温度が上がるまでの90分間も、薪サウナならではの楽しみです。「準備する時間」も含めて、薪サウナ体験は始まっています。
岩手・北東北では冬に停電リスクもあります。電気に頼らない薪サウナは、そういった意味でも北東北の暮らしにフィットしています。D'STYLEが手がけるKUUTA GANDŌシリーズに薪サウナストーブを採用しているのは、単なるこだわりではなく、この地域での合理的な選択でもあります。
準備するもの
薪サウナを焚く前に、以下のものを手元に揃えておきましょう。焚き始めてから「あれがない」となると、サウナ室を開けっぱなしにしなければならず、温度が逃げます。
- 薪(広葉樹を推奨: ナラ・クヌギ・リンゴ・桜)——サイズは太さ3〜8cm程度のものを数種類
- 着火材(新聞紙または専用着火材)
- 焚き付け用の小枝または細薪(直径1〜2cm)
- 火ばさみ・火かき棒
- ひしゃく(ロウリュ用)
- ロウリュ用の水(桶またはバケツに)
- 温度計(サウナ室内に設置)
薪は必ず「乾燥薪」を使ってください。伐採して1〜2年以上乾燥させたもの(含水率20%以下が目安)でないと、煙が多く出て室内が不快になりますし、ガラス面が煤で黒くなります。D'STYLEでは乾燥薪の販売・配達にも対応しています。
着火手順(Step by Step)
ストーブ下部または前面の空気取り入れ口(ダンパー)を最大に開ける。着火直後は酸素をたっぷり送り込むことで、火が安定しやすくなります。
ストーブ内に新聞紙を2〜3枚くしゃくしゃにして置き、その上に細薪(焚き付け)をクロスに重ねます。井桁状に積むと空気が通りやすく、火が回りやすくなります。着火材を使う場合はパッケージの指示に従ってください。
着火材または新聞紙に火をつけます。最初の2〜3分はドアを数センチ開けた状態にして、ドラフト(上昇気流)を作ります。煙が室内に逆流するようであれば、煙突が温まっていないサインです。少し時間を置いてから再着火しましょう。
焚き付けが順調に燃えたら、中太の薪(直径3〜5cm)を2〜3本追加します。一度に多く入れると酸素が足りなくなり、火が弱まります。少しずつ、様子を見ながら足すのがコツです。
室内の温度計が60〜70℃に達したら、太めの薪(直径6〜8cm)を1〜2本投入します。80〜90℃が「整い」温度の目安。それ以上上げたい場合は、薪を1本ずつ継ぎ足しながら調整してください。
ストーンが均一に赤みを帯びた状態がロウリュの最適タイミングです。ひしゃく1/3杯(約100mL)の水を、石の上にゆっくり円を描くように注ぎます。最初は少量から始め、様子を見ながら増やしてください。一度に大量にかけると急激に蒸気が発生し、やけどの原因になります。
東北の薪の選び方
薪の種類によって、火持ち・燃え方・香りが大きく異なります。岩手・東北で手に入る代表的な薪の特徴を解説します。
ナラ(最推奨)
岩手・秋田に豊富に自生する広葉樹の王様。火持ちが最も良く、高温を長時間維持できるため、サウナ薪として最適です。着火は少し時間がかかりますが、一度安定すれば長く安定した熱を出し続けます。D'STYLEが販売する薪の主力もナラです。
リンゴの木(青森産)
青森県のリンゴ農園で出る剪定枝を薪にしたものです。燃やすと甘い香りがサウナ室に広がり、アロマ効果も楽しめます。火持ちはナラより短めですが、香りを楽しみたい方におすすめ。青森ならではの薪です。
サクラ
独特の甘い香りがあり、燃えるときのパチパチとした音が心地よいです。火持ちは中程度。サウナに入りながら「サクラが燃えている」とわかる香りは格別です。
クヌギ
ナラと並ぶ高火力の広葉樹。炭になりやすく、熾火(おきび)の状態が長続きするため、温度の安定維持に向いています。薪の追加頻度を減らしたい場合はクヌギが使いやすいです。
注意: 針葉樹(スギ・ヒノキ・マツ)について
針葉樹は着火しやすく火力が上がりやすいですが、ヤニ(樹脂)が多く含まれるため、煙突や炉内にヤニが付着しやすいデメリットがあります。サウナ薪として使う場合は、焚き付け用として少量使う程度にとどめ、メインは広葉樹を使うことを推奨します。
温度管理のコツ
薪サウナの温度管理は「薪の量」と「空気口の開閉」の2つで行います。温度計を見ながら、次のように調整してください。
| 状況 | 対処法 |
|---|---|
| 温度が上がらない・低い(60℃未満) | 空気口を全開にし、細薪を追加して火力を上げる |
| 温度が適正(80〜90℃) | 空気口を半開程度にし、太薪を1本ずつ維持 |
| 温度が高すぎる(100℃超) | 空気口を絞り、薪の追加をしばらく止める |
| 温度が急に下がった | 薪が燃え尽きているサイン。太薪を1本追加 |
安定させるコツは「一度に多く入れない」こと。太薪を1本ずつ継ぎ足すことで、温度の乱高下を防げます。初心者のうちは15〜20分おきに温度計を確認する習慣をつけましょう。
ロウリュをもっと楽しむ
薪サウナの最大の楽しみのひとつがロウリュです。熱した石に水をかけて蒸気(löyly)を発生させ、体感温度を一気に上げます。電気サウナと違い、薪で温めた石は熱の蓄積量が多く、ロウリュをしても温度が急激に下がりにくいのが特徴です。
アレンジとして、ロウリュ用の水にフレッシュハーブや精油を数滴加える「アウフグース」スタイルも人気です。ミントやユーカリをひとつまみ混ぜるだけで、蒸気の香りが変わります。岩手では山野草(ヨモギなど)を使う方もいます。
安全な消火方法
使用後の消火は正しく行いましょう。間違った消火方法はストーブの損傷や安全上のリスクにつながります。
- 使用後は薪の追加をやめ、自然に火を落とす
- 炭(おき)が残っている状態で空気口を完全に閉じると、酸素が遮断されて自然消火する
- 絶対に水で消さない——石の割れやストーブ本体の損傷、急激な蒸気発生によるやけどの原因になる
- 翌朝、灰が完全に冷えたことを手の甲で確認してから灰処理を行う
- 灰は不燃容器(金属製バケツ)に入れ、少量の水をかけてから処理する
薪サウナを毎週使う場合、月に1度程度は炉内の灰掃除と、ガラス面の清掃(専用クリーナー使用)を行うと、常にクリアな炎を楽しめます。煙突の掃除は年1回、プロに依頼することを強くおすすめします。D'STYLEは英国RODTECH社認定の煙突掃除安全インストラクター(東北第一号)が在籍しており、煙突メンテナンスにも対応しています。
まとめ:薪サウナは「待つ時間」も楽しい
薪サウナは手間がかかります。でも、その手間が体験を豊かにします。着火して、薪を継ぎ足して、温度を見守って——90分かけて「自分でサウナを育てる」プロセスは、電気サウナにはない充実感があります。岩手の長い冬に、薪の前でゆっくり過ごす時間は、暮らしのなかの小さな贅沢になるはずです。
KUUTA GANDŌの薪サウナストーブ(HARVIA KIUAS VEGA)の詳細や、薪の調達・配達についてはD'STYLEショールームにてご相談ください。


