「じょっぱり」という言葉を聞いたことがあるだろうか。津軽弁で「意地っ張り」「頑固者」を意味する方言だ。「じょっぱりだ」と言われれば少し叱られているようにも聞こえるが、実は津軽の人々にとって「じょっぱり」は単なる悪口ではない。頑として自分の信念を曲げない、地に足のついた生き方への敬意が込められている言葉でもある。つがる市の「じょっぱり温泉」はその名を施設名に冠した、いかにも津軽らしい銭湯だ。
つがる市は2005年に木造町・森田村・柏村・稲垣村・車力村の5町村が合併して誕生した市で、青森県の西海岸に位置する。日本海に面し、干拓によって生まれた農地が広がるつがる平野は日本有数の農業地帯だ。米作りが盛んで、特に「つがるロマン」というブランド米は青森を代表するコメのひとつ。また、縄文遺跡「亀ヶ岡遺跡」はこの地にある——あの目が巨大な遮光器土偶が発掘された場所だ。
つがる市の銭湯文化とじょっぱり温泉の位置づけ
農業を主産業とする地域では、銭湯・温泉施設が農家の疲れを癒す場として重要な役割を担ってきた。田植えや稲刈りの繁忙期が過ぎたあとの一風呂は、農家の人々にとって何物にも代えがたいリフレッシュだ。じょっぱり温泉はそういった地域のニーズに応える、地元密着型の施設だ。
大人350円という料金設定は、この種の施設としても良心的だ。青森市内の一部施設や観光向けの温泉施設と比べると、利用者の顔ぶれも地元の常連中心になる。早朝から来て内湯に浸かり、サウナで汗を流し、水風呂で引き締め、また湯船へ。そういうリズムを黙々と繰り返す地元の人々の姿が目に浮かぶような、素朴な銭湯のサウナだ。
サウナ80℃・水風呂26℃の構成
サウナ温度は80℃と、いわゆる「熱めの中温サウナ」の範囲に入る。100℃超のガッツリ系ではなく、ゆっくりじんわり汗をかく温度帯だ。長時間じっくり座れるので、サウナ慣れしていない人や高齢の利用者も入りやすい。地元の温泉銭湯のサウナがこの温度帯を選ぶのは、客層の広さを考えた配慮でもある。
水風呂は26℃と、温かめの設定だ。冷たい水風呂が苦手という方にはむしろ好都合で、水風呂初心者でも気軽に試せる。特に高齢者にとっては急激な体温変化が心臓に負担をかけることもあるため、26℃という温度は身体に優しい設定と言える。フィンランドサウナの本場でも、サウナ後に湖水に飛び込む習慣があるが、湖水温度は夏でも20℃前後のことが多い。26℃はその温度に近い。
「汗をかいて、温かい水風呂でゆっくり冷ます。じょっぱりな精神で、ただただ入り続ける。それがこの施設の正しい使い方かもしれない」
ととのいスペースは銭湯規模の施設なので、フィットネスクラブや専門サウナほど整備されていないかもしれない。ただ、内湯との往復、サウナと水風呂の組み合わせ、そして休憩——というサウナの基本サイクルは十分に楽しめる構成だ。
津軽平野とつがる市の地域背景
つがる市が位置する津軽平野の西側は、かつて「十三湖」と呼ばれた汽水湖が広がっていた地帯だ。江戸時代から始まった干拓事業によって、湖の多くが農地へと変えられた。しかし今も十三湖はシジミの産地として知られ、つがる市はシジミ漁業と農業が共存する地域でもある。海と農地と湿地が交じり合うこの地形は、青森県の中でも独特の景観を持つ。
木造町時代から続く「亀ヶ岡遺跡」は縄文時代後期から晩期の遺跡で、特に遮光器土偶はその異形な姿から「宇宙人土偶」とも呼ばれる人気の考古品だ。東京国立博物館にも所蔵されており、日本の縄文文化を代表する遺物のひとつ。つがる市にはこの遺跡を含む「縄文の道」をたどる観光ルートがある。
農業では、リンゴ・米・ニンニクが主要作物だ。ニンニクは青森県全体の生産量が日本一で、つがる地域もその主産地のひとつ。ニンニクの収穫期(6〜7月)には畑に独特の香りが漂い、収穫後のニンニクが吊るされる景色が津軽の夏の風物詩だ。じょっぱり温泉はそういう農業地帯の暮らしに根ざした施設だ。
D'STYLEスタッフが感じる「地元銭湯サウナ」の価値
私たちD'STYLEは岩手・青森・秋田を主な活動エリアとしており、農村地帯の温泉銭湯にも多く立ち寄ってきた。高規格のスパや話題のサウナ施設ももちろん魅力的だが、こういった地域密着の銭湯サウナには独自の価値がある。
まず、常連客の多い銭湯では「サウナ道」が自然と体に刷り込まれている人が多い。特に無言でサウナと水風呂を繰り返す高齢の常連氏の姿は、フィンランドのサウナ文化における「無駄を省いた本質的なサウナ」に近いものがある。派手なロウリュも過剰な設備もない、ただ汗をかいて冷やして休む——その繰り返しが体を整える。
また、料金の安さは「毎日来られる」ことを意味する。350円なら1日おきに来ても月5,000円ほど。これは地域の人々の健康維持インフラとして銭湯サウナが機能していることを示す。サウナが「非日常体験」である必要はなく、毎日の生活の一部であるべきだ——じょっぱり温泉はそのことを体現している。
HARVIAのサウナヒーターを扱うD'STYLEとして申し上げれば、このような地域の銭湯サウナが使う設備は多くの場合が経年した機器で、メンテナンスの重要性を感じる施設も少なくない。定期的な点検と必要に応じた設備更新が、地元の人々の大切な空間を守ることにつながる。
FACILITY DATA
| 施設名 | じょっぱり温泉 |
|---|---|
| 住所 | 青森県つがる市(詳細は施設にご確認ください) |
| アクセス | JR五能線・木造駅周辺(つがる市中心部) |
| 大人料金 | 350円 |
| サウナ | 80℃ |
| 水風呂 | 26℃ |
| 施設種別 | 公衆浴場・日帰り温泉 |
| 定休日 | 施設にご確認ください |