薪ストーブのあるお宅にお邪魔すると、たいてい、いちばんいい場所は先客で埋まっています。ストーブの正面、少し離れた特等席。そこで犬が伸びていたり、猫が香箱を組んでいたり。飼い主さんは決まって、少し呆れた顔で、でもうれしそうに言います。「火を入れると、真っ先に来るんですよ」。一方で、自宅にサウナを作ったお客様からは、こんな質問をいただきました。「うちの犬、私がサウナに入ると、ドアの前で待ってるんです。一緒に入れてあげられないですか?」。気持ちは、痛いほど分かります。でも、答えは、はっきりお伝えしなければなりません。今日は、ペットと火と熱の、正しい距離の話です。
動物は、いい熱を知っている
犬や猫が薪ストーブの前に集まるのには、ちゃんと理由があります。薪ストーブの熱の主役は、太陽と同じ「輻射熱」。風を起こさず、遠赤外線で体の芯にじんわり届く熱です。温風を吹き付けるファンヒーターとは、温まり方の質がまるで違う。毛皮を着た彼らは、乾いた温風より、この静かで深い熱のほうがずっと心地よいことを、体で知っているのです。日なたぼっこが大好きな動物たちにとって、薪ストーブは、家の中にある小さな太陽。彼らの態度こそ、輻射熱の気持ちよさの、いちばん正直な証明だと思います。(輻射式と対流式の話は、こちらに詳しく。)
猫は高いところ、犬はべったり
おもしろいのは、動物ごとの流儀です。猫は、ストーブがよく見える棚の上や、少し離れたソファの背もたれなど、「熱すぎない、いい距離」を自分で見つける名人。日ごとに、時間ごとに、少しずつ位置を変えて、その時のベストポジションに移動します。犬は、もっと単純で、もっと大胆。床にべったり寝そべって、おなかを火に向けて、ときどき裏返る。焼き加減を自分で調整しているようで、見ていて飽きません。薪ストーブを入れたお客様から、「ストーブを焚くと家族が居間に集まるようになった」という話をよく聞きますが、いちばん早く集まるのは、たいてい四本足の家族です。
守ってあげたい、安全のこと
ただ、ここは飼い主さんの出番です。動物は熱さをよく知っていますが、事故への想像力はありません。いくつか、守ってあげてください。
まず、稼働中の薪ストーブの天板や側面は、大変な高温になります。猫がうっかり飛び乗らないよう、特に焚きはじめの時期は気をつけて。ストーブの周りに、物理的に近づきすぎないためのハースゲート(柵)を置くのも、子犬や子猫、やんちゃな性格の子には安心です。しっぽの長い子が、開いた炉の扉のそばに来ないよう、薪の追加のときはひと目を。それから、ストーブの前で寝ている子が低温やけどをしないよう、あまりに長時間同じ姿勢で寝ていたら、少し声をかけてあげてください。彼らはたいてい、自分で移動しますが、年をとった子や病気の子は、感覚が鈍っていることがあります。
留守中は、扉をきちんと閉めて、ガードを置いていれば、薪ストーブは基本的に安全な暖房です。むしろ倒れる心配のある電気ヒーターより安心だ、という飼い主さんも多くいらっしゃいます。
火のそばの、静かな時間
夜、薪がパチパチと鳴る部屋で、本を読む。足元では犬が寝息を立てて、膝の上には猫。この時間のために薪ストーブを入れた、と言ってもいいくらいの、何でもない、最高の夜です。動物と暮らしている方なら、想像しただけで、頬がゆるむはずです。そして冬の岩手で、この時間ほど贅沢なものは、そうありません。
サウナには、入れられません
ストーブの前であんなに幸せそうなら、サウナも一緒に、と思う気持ちは、飼い主として自然です。でも、ここは、はっきり線を引かなければなりません。サウナに、ペットは入れられません。
人間がサウナの熱に耐えられるのは、全身の皮膚にある汗腺という、優秀な冷却装置を持っているからです。汗が蒸発するとき、まわりの熱を奪ってくれる。この仕組みがあるから、私たちは九十度の部屋で「気持ちいい」と言っていられます。犬には、この装置が、ほとんどありません。犬の汗腺は肉球などのごく一部にしかなく、体温調節は、口を開けてハアハアと呼吸するパンティングが頼りです。この方式は、まわりが高温多湿だと、ほとんど働かなくなります。さらに犬は毛皮を着ていて、もともと人より体温が高く、熱の逃がし場がない。人にとっての「気持ちいい熱」は、彼らにとっては、命に関わる熱なのです。真夏の車内の事故と、まったく同じ理屈だと考えてください。短時間でも、絶対に、です。
猫も、サウナの暑さには耐えられない
砂漠出身の祖先を持つイメージから暑さに強そうに見えますが、これも思い込みです。猫の平熱は人よりやや高く、やはり汗で全身を冷やす仕組みを持っていません。毛づくろいで唾液を体に塗り、その気化でわずかに涼をとる程度です。日なたやこたつを好むのは、「暑くなったら自分で離れる」を選べるから。高温がこもったサウナ室のような、逃げ場のない環境は、犬と同じく、猫にとっても危険です。
ストーブの前と、サウナの中は別物
「でも、うちの子はストーブの前が大好きじゃないか」と思われるでしょう。あれは、彼らが自分で距離を選べるからです。熱ければ離れ、寒ければまた近寄る。出入り自由の輻射熱と、閉じた高温の部屋は、まったくの別物です。動物は熱さを感じてはいても、サウナ室のドアを自分で開けて出ることはできません。選べない環境に置かないこと。これが、動物と熱の付き合いの大原則です。ストーブの前の特等席は大歓迎、サウナ室の中は人間だけ。この線引きこそが、彼らを守ります。
待たせて、外気浴で再会する
では、サウナ好きの飼い主はどうするか。答えは簡単で、サウナのあいだは、あたたかい部屋で待っていてもらう。薪ストーブの前の特等席があれば、彼らはむしろ喜んで留守番してくれます。そして、外気浴で再会するのです。庭やデッキの外気浴なら、犬は足元にちょこんとお座りして、いっしょに夜風にあたってくれる。ととのった飼い主と、庭を一回りしてきた犬。冬の夜の、とてもいい図です。猫はたいてい、湯上がりのあたたかい膝を、ソファでちゃっかり待っています。サウナは人間だけの時間、火のそばは家族全員の時間。この住み分けが、いちばん、みんなの幸せに近い形です。
四本足の家族にも、いい冬を
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、またペットと暮らすお宅の薪ストーブ設置の経験も豊富な店として、家族全員(四本足を含む)が心地よい家づくりをお手伝いしています。ペットと暮らすお宅なら、ガードの置き方や、留守中の焚き方のコツまで、実例をまじえてご提案します。ご相談のときは、ぜひ愛犬愛猫の話も聞かせてください。おすすめの間取りの工夫、一緒に考えます。
写真: Markus Säynevirta (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)