健康診断の結果に「呼吸器」の文字を見て、少し立ち止まったことがある方へ。フィンランドで長く続けられている追跡調査に、サウナに入る頻度と、入院を伴うような呼吸器の病気の発症数を見比べた報告があります。数字だけを追うのではなく、この報告がどこまでのことを言っていて、どこから先は言っていないのかを、岩手で薪ストーブとサウナの設置を続けてきた者として、ゆっくり読んでいきます。
健診結果の紙に、呼吸器の文字を見つけたら
冬の現場に上がっていると、薪ストーブの点検にうかがったお宅で「実は去年の健診で、ちょっと引っかかってさ」という話を聞くことがあります。血圧や血糖の話が多いのですが、ときどき呼吸器の話も出ます。咳が長引いた、肺炎で入院した知り合いがいる、といった具合です。
岩手の冬は長く、暖房を焚くほど部屋の空気は乾きます。私たちが薪ストーブの下見でお宅の湿度計を見ると、30%を切っていることがよくあります。乾いた空気と寒さ、そして高齢化が重なる土地で、呼吸器の話は他人事ではありません。
今回紹介するのは、そういう不安を抱える方が検索してもなかなか出会わない、フィンランドの追跡調査の報告です。
どんな調査だったか
報告しているのは、Kunutsor SKさんたちの研究チームです。2017年、European Journal of Epidemiologyという学術誌に発表されました。
対象は、フィンランドのKIHDという追跡調査(同じ集団を長期間にわたって観察する研究)に参加した、42歳から61歳の男性1,935人です。この人たちを、中央値(データを大きさ順に並べたときの真ん中の値)で25.6年という長い期間、追跡しています。
その間に、入院につながるほどの呼吸器の病気と診断された人が379件ありました。ここでいったん立ち止まっておきたいのですが、この調査の対象はフィンランドの中高年男性のみです。女性のデータは含まれておらず、日本の生活習慣や住環境にそのまま当てはめられるものではありません。
頻度で分けると、数字はこう並んだ
週に1回以下しかサウナに入らない群を基準にして比べると、週2〜3回入る群は呼吸器疾患のハザード比(基準群に対するリスクの比。1より小さいほど発症が少なかったことを示す統計上の指標)が0.73(95%信頼区間0.58〜0.92)。週4回以上の群では0.59(95%信頼区間0.37〜0.94)でした。信頼区間というのは、真の値がどのあたりの幅に収まりそうかという推定の幅のことで、この幅が1をまたいでいなければ、統計的に意味のある差とみなされます。
同じ研究チームによる別の解析(2021年、European Journal of Clinical Investigation)では、対象をKIHDの男性2,275人・中央値26.6年の追跡に広げ、肺炎に絞って調べています。ここでは肺炎が529件あり、頻度の高い群(週2〜7回)は単独でハザード比0.81(95%信頼区間0.68〜0.97)。さらに体力の低さとサウナ頻度を掛け合わせて見ると、体力が低く頻度も低い群を基準にした場合、体力が高く頻度も高い群ではハザード比0.62(95%信頼区間0.48〜0.80)でした。
この数字が言っていないこと
ここではっきりさせておきたいことがあります。この調査は「サウナに入れば呼吸器の病気を防げる」と証明したものではありません。これは観察研究、つまり後から人々の生活習慣と病気の記録を見比べた研究であり、原因と結果の関係(因果関係)を確かめる実験ではないのです。
サウナによく入る人は、もともと体力があり、生活に余裕があり、風邪をひいても休める環境にいる、という可能性は排除しきれません。逆の順番、つまり「元気だから頻繁に入れている」という見方(逆因果)も成り立ちます。研究チーム自身も、身体活動レベルなど複数の要因を統計的に調整したうえで、それでも関連が残ったと報告していますが、それで因果関係が証明されたことにはなりません。
また、379件、529件という発症数は、それぞれ別の解析での数字であり、単純に足し合わせられるものではない点も付け加えておきます。
湿度をつくる装置としてのサウナ
私たちが売り手として実際に体験してきたのは、研究データではなく、現場の実感です。冬の岩手の家は、薪ストーブで暖めるほど空気が乾きます。そこにサウナ室があると、ロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を出すこと)のたびに室内の湿度が上がる瞬間があります。
これは効能の話ではなく、設備としての性質の話です。乾燥・寒さ・高齢化という三つが重なる土地で、湿度をつくれる場所が家の中にひとつあることには、暮らしの側の意味があると私たちは感じています。研究が示した数字とは、あくまで別の話としてです。
体調がすぐれないときは、入らない
ここは研究の話ではなく、私たちが現場で必ずお伝えしていることです。発熱しているとき、体調が悪いときにサウナに入るのは避けてください。呼吸器の症状がある方、持病がある方、通院中の方は、サウナの利用について自己判断せず、必ず主治医に相談してください。
この記事で紹介した研究は、あくまで集団を長期間観察した結果の一つであり、個々の病状に対する治療や予防の指針ではありません。
岩手で設置を考える方へ
私たちD'STYLEは、盛岡を拠点に、ハルビアの薪サウナヒーターを中心とした自宅サウナや、屋内外のサウナ小屋の施工を手がけています。ご相談をいただく中で「健康のために」という言葉を聞くことは多いのですが、私たちは効能を約束する立場にはありません。
今回のような研究を紹介するときも、都合の良い数字だけを選ばないことを大切にしています。呼吸器の心配がある方は、まず主治医にご相談のうえで、暮らしの中の一つの選択肢として、私たちにもお声がけください。
私たちは医療の専門家ではなく、火とサウナを設置する側の人間です。だからこの記事で言えるのは、フィンランドの報告にはこう書いてある、というところまでです。予防や治療の効果を約束するものではありません。もし体調に不安がある方、持病のある方、通院中の方は、まず主治医に相談してください。そのうえで、岩手の冬の乾いた空気の中で、湿度をつくる場所として自宅サウナを検討したいという方は、私たちD'STYLEにご相談ください。ハルビアの薪サウナヒーターや、屋内外のサウナ小屋の施工を、盛岡を拠点に手がけています。
本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Kunutsor SK, Laukkanen T, Khan H, Willeit P, Zaccardi F, Laukkanen JA. Sauna bathing reduces the risk of respiratory diseases: a long-term prospective cohort study. European Journal of Epidemiology, 2017 (PubMed 28905164)
- Kunutsor SK, Laukkanen T, Laukkanen JA. Cardiorespiratory fitness, sauna bathing habits, and risk of pneumonia in men: a long-term prospective cohort study. European Journal of Clinical Investigation, 2021 (doi:10.1111/eci.13490)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。