サウナ歴の長い人たちに「初心者のころの失敗」を聞くと、みんな同じ話をして、みんな同じ顔で笑います。薪ストーブの先輩たちも、まったく同じです。国も年代も違うのに、通る道はほとんど同じ。今日は、サウナの失敗10個と、薪ストーブの失敗5個を並べます。これから始める方は予習として、ベテランの方は思い出し笑いとして、どうぞ。
サウナの失敗:熱の三つ
一、我慢比べをしてしまう。砂時計が落ちきるまで意地でも出ない。隣の人より先に出たら負けた気がする。→サウナは勝負の場所ではなく、体を緩める場所です。「気持ちいい」が「つらい」に変わる手前で出るのが正解で、無理をした日ほど、ととのいはむしろ浅くなります。二、いきなり最上段に座る。上級者っぽいから。→上段は体感で10度以上熱いこともあり、初日にここへ座ると、たいてい熱さに驚いて早々に退散します。まず下段からが、結局いちばん早くサウナを好きになれる近道です。三、サウナハットを「かぶるの恥ずかしい」と思う。→三か月後、あなたは必ずかぶっています。頭ののぼせにくさと、髪の傷みにくさが、まるで違うからです。(ハットの話)
サウナの失敗:水の三つ
四、水分を取らずに入る。→脱水はサウナ後の頭痛と疲れの主犯です。前・途中・後に一杯ずつ、が合言葉。汗で出た分は、必ず戻してあげてください。(水分の話)五、水風呂で息を止めて突入する。→息を止めると、冷たさの衝撃は倍増します。ふーっと息を吐きながら、ゆっくり肩まで。吐く息が、冷たさをやわらげる魔法です。(呼吸の話)六、水風呂を根性で我慢する。→水風呂は冷たさに耐える場所ではなく、火照りを心地よく締める場所。体の周りにできる、羽衣と呼ばれるあたたかな膜が心地よいうちに、すっと出る。ここにも勝負はありません。心地よさだけが正解です。
サウナの失敗:ととのいの四つ
七、外気浴を省略する。「寒いから」とすぐ服を着る。→ととのいの本番は、実は外気浴です。ここを飛ばすのは、映画をクライマックス直前で出てしまうようなもの。八、「ととのわなきゃ」と焦る。→ととのいは、追いかけると逃げます。何も期待せずぼんやりした日に限って、ふいに降りてくる。そういう天邪鬼なものです。九、スマホを外気浴に持ち込む。→せっかく静まった頭が、通知ひとつで会議室に引き戻されます。十、サウナ後に予定を詰める。→ととのった体は、のんびりしたがっています。サウナの後の余韻の時間まで含めて、サウナです。車で来た日は、しっかり休んでから運転を。(帰り道の話)
薪ストーブの失敗:生木を焚いて、家が燻製小屋に
駆け出しの冬、乾燥が足りない薪を「まあいけるだろう」で焚いた夜のことです。火はくすぶり、ガラスは一晩で真っ黒、部屋にはうっすら煙の匂い。翌朝、家族の服がぜんぶ燻製の香りになっていました。教訓。薪の乾燥不足は、焚き手の技術では取り返せません。含水率は正直です。シューシューと湿った音がしたら、その薪は来年の選手。(乾いた薪の見分け方は、こちら。)
薪ストーブの失敗:軍手は、耐熱ではなかった
これは体で覚えた教訓です。作業用の軍手で、熱くなった扉のハンドルを、自信満々に握りました。軍手は断熱材ではなく、ただの布です。しかも編み目から熱が即座に通る。幸い水ぶくれ一つで済みましたが、以来、店では口を酸っぱくして言っています。火のそばの手は、厚手の革グローブ。軍手の万能感は、火の前では通用しません。(道具の話は、こちら。)
薪ストーブの失敗:三日前の灰が、生きていた
灰の始末の話は何度も書きましたが、書く資格があるのは、ヒヤリとした経験があるからです。三日置いた灰を「もう冷めた」と思い込み、素手で確かめたら、底のほうに、まだ熱がありました。金属バケツだったから事なきを得ましたが、これが紙袋だったらと、今でも背中が冷えます。灰の中の熾火は、驚くほど長生きです。金属バケツ、ふた付き、屋外、数日。この呪文に、例外はありません。(灰の扱いは、こちら。)
薪ストーブの失敗:空気を絞りすぎて、煙突が泣いた
火が安定したのが嬉しくて、早々に給気を絞り、とろ火で長持ちさせようとした冬もありました。結果、炉内の温度が上がりきらず、煙は白く濁り、煙突の内側にはねっとりしたタールがたまっていく。低温のくすぶり運転は、煙道を汚す近道だったのです。教訓。焚きはじめは空気を惜しまず、炉内をしっかり高温に育ててから、少しずつ絞る。細い薪から太い薪へと、くべる順番も大切です。とろ火の誘惑は、春の掃除のときに、まとめて高くつきます。
薪ストーブの失敗:薪を詰めすぎて、真っ赤に
寒い夜、早く暖まりたい一心で、炉いっぱいに薪を詰め込み、空気も全開のまま台所へ離れたことがあります。戻ってみると、天板がうっすら赤らむほどの過燃焼。慌てて空気を絞りました。薪ストーブの暖かさは、量で稼ぐものではなく、火加減で整えるものです。適量を、こまめにくべるのが、いちばん安全で、結局いちばん暖かい。炉に詰め込みすぎない、目を離すときは落ち着いた火加減で。火は、急かすほど言うことを聞かなくなります。
サウナも薪ストーブも、失敗の根っこは同じ
十五個を並べてわかるのは、サウナの失敗も薪ストーブの失敗も、根っこが同じだということです。「早く上手になろうとした」「少し面倒をはしょった」。もっと熱く、もっと長く、もっと手軽に。その気負いが、体や道具に無理をさせる。サウナに上達は要りません。薪ストーブにも近道はありません。要るのは、自分の体と火の声に正直になることだけ。失敗を笑いながら、少しずつ自分の型ができていく。その過程ごと、火の暮らしの楽しみです。(型づくりの話は、100回続けたらへ。)
失敗できる場所を、つくる
岩手・盛岡のD'STYLEは、誰の目も気にせず試行錯誤できる自宅サウナの設置と、薪ストーブの設置をお手伝いしています。失敗も上達も、全部あなたのペースで。おすすめの一台のご相談、いつでもどうぞ。
写真: Tero Karppinen from Finland (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)
