YOMIMONO / 冬至の夜 YUZU

いちばん長い夜を、
いちばん深く。

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2025年4月11日 / 最終更新日:2026年8月1日

十二月の下旬、一年でいちばん夜の長い日がやってきます。冬至です。柚子湯に浸かり、かぼちゃを食べる日本の習わし。実はこの日、世界中の北の民が、それぞれの流儀で火を焚いてきました。今日は、冬至と火と蒸気の話です。

冬至は、太陽の折り返し地点

冬至は、闇の底であると同時に、希望の日です。この日を境に、日は一日ずつ長くなっていく。太陽の折り返し地点。だから古代の人々は、世界中で冬至を「太陽の再生の日」として祝いました。北欧の冬至の祭り「ユール」では、大きな薪(ユールログ)を何日も燃やし続けて、太陽の帰りを迎えました。クリスマスの薪型ケーキ、ブッシュ・ド・ノエルは、あの薪の名残です。フィンランドの聖夜のサウナ(こちら)も、この冬至の火の系譜。闇のいちばん深い日に、火を焚く。人類共通の、冬の祈りの型です。

「ん」のつくものを食べる日

日本の冬至には、食の縁起もあります。かぼちゃを食べるのは、「南瓜(なんきん)」に「ん」がつくから。冬至は「運盛り」の日とされ、「ん」のつくものを食べると運を呼び込むと言われました。なんきん、れんこん、にんじん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うどん。この「冬至の七種」を並べると、なるほど「ん」だらけです。栄養をつけて寒さに備える暮らしの知恵を、言葉遊びの願かけに包んで楽しむ。日本人の、こういう明るいゲン担ぎが、私は好きです。

柚子湯は、香りの禊でした

日本の柚子湯も、同じ祈りの和風版です。冬至(とうじ)と湯治(とうじ)の語呂合わせと言われますが、根っこは、強い香りで邪気を払い、体を温めて無病息災を願う禊の湯。旬の柚子の香りには、体を温める入浴効果も知られています。ここで、サウナの家の楽しみをひとつ。冬至の夜の、柚子ロウリュです。ロウリュ用の桶の水に、柚子の果汁を数滴、または輪切りを浮かべて、香りの蒸気を上げる(石に直接果肉や皮を載せるのは焦げのもとなので、水に香りを移すのが作法です)。和の香りのロウリュは、この夜にいちばん似合います。(ロウリュの水の話は、こちら。)

一陽来復、運の上向く日

冬至には、一陽来復という美しい呼び名もあります。陰が極まって、再び陽が返ってくる。悪いことが続いても、ここが底で、これから運が上向いていく、という意味です。一年でいちばん昼の短いこの日を、暗い底ではなく、上り坂の出発点として言祝ぐ。この前向きな読み替えは、火を焚いて太陽の帰りを祝った古代の人々の気持ちと、まっすぐつながっています。柚子湯とサウナで体を温めながら、明日から光が伸びていくと思う。冬至は、静かに希望を仕込む夜なのです。一年でいちばん暗いこの日を、恐れるのではなく祝う。落ち込んだときほど、ここが底だと言い聞かせて顔を上げる。冬至の言い伝えは、季節の話であると同時に、暮らしを前向きに立て直すための、小さなおまじないでもあります。

いちばん長い夜の、フルコース

冬至の夜は長い。だから、ゆっくり使いましょう。夕方、かぼちゃの煮物を天板でことこと。夜、柚子ロウリュのサウナと、冬至の柚子湯の合わせ技。外気浴で見上げる空は、一年でいちばん星の時間が長い空です。締めに、天板の甘酒かホットりんご。明日から日が伸びていくのだと思いながら布団に入る。闇の底の夜が、一年でいちばん豊かな夜に変わります。(ホットドリンクは、こちら。)

太陽の帰りを、火と待つ

岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、季節の行事が楽しくなる火と蒸気の暮らしをお手伝いしています。次の冬至は、ユールログの末裔たる薪ストーブと、柚子ロウリュで。ご相談、いつでもどうぞ。

写真: Koichi Shibata (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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