冬の外気浴で、椅子に沈んで動かずにいると、面白いことが起きます。鳥が、すぐそこまで来るのです。シジュウカラが庭木を渡り、ヤマガラが目の前の枝に止まる。人間が「動かない置物」になった数分後、庭は鳥たちの時間に戻る。今日は、外気浴とバードウォッチングという、静かな趣味の重なりの話です。
ととのい姿勢は、観察の正解姿勢
野鳥観察の基本は、動かず、音を立てず、待つこと。つまり、外気浴でととのっている人間は、知らぬ間にバードウォッチングの正解姿勢を取っています。鳥の警戒心は、人の動きに反応します。毛布にくるまって微動だにしない外気浴の人は、彼らにとって岩か切り株のようなもの。ふだん双眼鏡を持って追いかけても近づけない距離まで、向こうから来てくれる。ととのいの静けさが、そのまま観察の腕前になる。こんな趣味の相性は、めったにありません。(外気浴の装備は、椅子の話。)
「野鳥」という言葉の、生まれ
いまでは当たり前の「野鳥」という言葉、実は生まれてまだ百年ほどです。名づけたのは、日本野鳥の会を一九三四年に創立した中西悟堂。それまで鳥は、籠で飼うか、獲って食べるものでした。中西は「鳥は野で、自然のままに」という考えから、「野鳥」「探鳥」という言葉をつくったのです。庭に来る鳥を、飼うのでも獲るのでもなく、ただ眺めて楽しむ。外気浴の椅子から鳥を見る私たちは、この百年前のまなざしの、まっすぐな後継者というわけです。
岩手の冬の、常連たち
岩手の冬の庭に来る顔ぶれは、なかなか豪華です。ネクタイ模様のシジュウカラ、オレンジのお腹のヤマガラ、小さな体で群れるエナガ。冬にやってくるジョウビタキのオスは、羽に白い紋があり「紋付鳥」とも呼ばれます。ヒヨドリ、ツグミ、赤い実をついばむレンジャク類の当たり年もあり、近くに林があれば、コンコンと木を叩くアカゲラ、つまりキツツキの仲間も。冬のカラ類はしばしば種を越えて一緒に群れ、これを「混群」と呼びます。名前を三つ覚えるだけで、庭の解像度は驚くほど上がります。去年は来なかった鳥が今年は毎日来る、そんな小さな変化に気づくのも、庭に通う鳥を見続ける楽しみです。
庭に招く、二つの仕掛け
鳥をもっと呼びたければ、仕掛けは二つ。餌台と、水場です。冬場の餌台にヒマワリの種や牛脂を置けば、カラ類の食堂になります(餌やりは冬の間だけ、が野鳥との付き合いの作法です)。そして意外に効くのが水場。冬は凍らない水が貴重なので、浅い水盤の水を朝替えるだけで、水浴びの客が来ます。サウナ小屋の屋根や薪棚は、鳥たちの止まり木としても人気です。薪棚の主のように毎朝来るヤマガラに、名前がついているお宅もあります。(薪棚の話は、こちら。)
地鳴きと、さえずりの境目
鳥の声には、二種類あります。冬のあいだの「地鳴き」は、チッ、ツピッといった短い連絡の声。それが二月の終わりごろ、少しずつ変わりはじめます。シジュウカラの「ツツピー、ツツピー」という求愛のさえずりが混じりだすと、春はもうそこ。外気浴でととのいながら聞く声が、いつのまにか冬から春のものに変わっている。ととのいの数分が、季節の定点観測になるのです。同じ椅子から、同じ庭を、毎日眺める。その積み重ねが、図鑑には載っていない「わが家の鳥ごよみ」を育てていきます。
五感の外気浴に、鳥の声を
目を閉じれば、鳥の声の外気浴。目を開ければ、羽の色の外気浴。庭のサウナの楽しみは、こうしてどこまでも増えていきます。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、庭ぐるみのサウナ暮らしをお手伝いしています。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Smoky Vendace (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)
