この読み物では、山と森と雪の岩手ばかり書いてきました。今日は、もう一つの岩手へ。三陸の海です。リアスの入り江、断崖の水平線、浜の暮らし。海の岩手にも、火と蒸気の話はちゃんとあります。
浜には、熱い風呂の文化がある
三陸の浜には、昔から熱い風呂の文化があります。冷たい海で働く漁師たちにとって、上がってからの熱い湯は、体を取り戻す命綱でした。番屋の風呂、熱めの銭湯、サッパ船の仕事のあとの一番風呂。海の冷えは、山の冷えと同じくらい深い。浜の人たちは、熱の価値をよく知っています。ワカサギ釣りの解凍サウナ(こちら)の理屈は、海でも同じ。海仕事、海遊び、冬の浜歩きのあとのサウナは、深部の冷えの芯まで抜いてくれます。
浜の朝は、早い
三陸の漁師の朝は、暗いうちから始まります。凍える海に出て、わかめや牡蠣、ほたてを水揚げし、かじかむ手で網をさばく。冷えは、体力を静かに奪います。それで、浜には仕事のあとに体を芯から温め直す知恵が根づいてきました。番屋のだるまストーブ、熱めの湯、上がってからの熱いお茶。これはそのまま、サウナで深部体温を戻し、冷えをリセットする考え方と同じです。海の幸で腹を満たし、蒸気で体を戻す。三陸の浜は、海と向き合う人の体を守る温もりの文化を、昔からしっかり持っていた土地なのです。
海霧の夏と、外気浴
三陸の夏の名物が、海霧です。地元で「じり」とも呼ばれる、やませが運ぶ冷たい霧(やませの話)。内陸が真夏日でも、浜は霧に包まれてひんやり、ということが珍しくありません。この冷涼な夏の空気、サウナーの目には宝物に見えます。真夏でも上質な外気浴ができる土地。霧の中の外気浴は、ロウリュの蒸気と海の霧が続きになったような、不思議な体験です。熱に火照った肌を、海からの霧がすっと冷ましていく。冷房のきいた部屋とはまるで違う、生きた涼しさがそこにあります。海水浴とセットのテントサウナも、三陸の夏の遊びとして根づきはじめています。
海を見る外気浴という、別格
そして、海辺のサウナの本領は、外気浴の景色です。水平線、寄せては返す波の音、行き交う漁船、朝日。山の外気浴が「静」なら、海の外気浴は「悠」。波の音は焚き火と同じ1/fのゆらぎで、目を閉じても開けても、ととのいが深い。満ちては引く潮のリズムに呼吸を合わせていると、体の内側の時計まで、ゆっくりほどけていくようです。海鳥の声、潮の匂い、頬をなでる風。五感のすべてが外気浴のごちそうになるのが、浜のサウナです。太平洋から昇る朝日を浴びる朝ウナは、三陸だけの豪華版です。(波音と炎の話は、こちら。)
潮風との付き合いは、正直に
実務の注意も。海辺の屋外サウナと薪ストーブは、塩害との付き合いが必要です。金属部の錆は内陸より早く進むため、機器の防錆と点検はこまめに、小屋の金物は錆に強い仕様を。この土地事情ごと設計するのが、長持ちの鍵です。とはいえ、対策さえ知っていれば、恐れることはありません。ステンレスや溶融亜鉛めっきの金物を選び、シーズンの後には真水で潮を洗い流す。そのひと手間を習慣にすれば、潮風の中でも道具は長く元気に働きます。沿岸のお客様のご相談も、経験をもとにお応えします。
海の岩手にも、火と蒸気を
宮古、釜石、大船渡、陸前高田。海のまちのサウナ暮らしも、岩手・盛岡のD'STYLEがお手伝いします。海を見ながらととのう朝を、あなたの浜に。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: PumpkinSky (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

