YOMIMONO / 群島 ARCHIPELAGO

海に、二万の
島がある。

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年5月30日 / 最終更新日:2026年8月1日

フィンランドの南西の海には、数えきれないほどの島が浮かんでいます。その数はおよそ二万とも言われ、大きな島から、岩がぽつんと顔を出しただけの小島まで、海いちめんに散らばっている。世界でもこれほど島の密に集まった海はめずらしく、地図を広げると、青の中に無数の緑の点がちりばめられているように見えます。サーリストと呼ばれるこの群島は、フィンランドの夏を象徴する、美しい海の風景です。今日は、無数の島がつくる、北欧の海の話をします。

海に、島が散らばる

フィンランド南西部、トゥルクの沖に広がる群島は、世界でも指おりの規模を誇ります。氷河が大地を削り、そのあと土地がゆっくり隆起してできた無数の島々。松の生えた岩の島が、青い海の上に点々と連なる風景は、ほかではなかなか見られません。島から島へは、橋や小さなフェリーで渡っていきます。車と船を乗りついで島々をめぐる旅は、フィンランドの夏の定番の楽しみのひとつです。

島の、夏の暮らし

多くのフィンランドの人が、群島のどこかに小さな夏の家を持っています。夏になると、家族で島へ渡り、しばらくそこで暮らす。電気や水道が最小限の島も多く、人々は自然のリズムに合わせて過ごします。朝は海で泳ぎ、昼は釣りをし、夕方はサウナをたく。都会の便利さから離れ、島と海だけの時間に身をゆだねる。この素朴な島暮らしこそ、フィンランドの人が一年でいちばん心待ちにする、夏のしあわせのかたちです。

島のサウナと、海の水

群島の島には、たいてい水辺にサウナがあります。熱くたぎるサウナで汗を流したあと、そのまま桟橋から海へ飛び込む。塩けをふくんだバルト海の水は、湖の水とはまた違うひんやりとした感触で、火照った体をきりりと引きしめます。海に囲まれた小さな島で、火と蒸気と海水を行き来する。まわりに人けはなく、聞こえるのは波と風の音だけ。島のサウナは、フィンランドのサウナ文化の中でも、とりわけ贅沢なひとときです。波の音と、薪サウナストーブのはぜる音だけが響く小島のサウナは、ここでしか味わえない静けさに満ちています。日が沈まない夏の夜には、あかね色の空を映した海へ、いつまでも入っていられます。

三陸の島々と、重ねてみる

海に浮かぶ島の風景は、岩手の人にもなじみがあります。三陸のリアスの海岸には、大小の島や岩礁が点在し、入り組んだ湾が続きます。フィンランドの群島とは気候も成り立ちも違いますが、海と島がつくる景色の豊かさや、水辺で暮らす人の営みには、通じるものがあります。海を眺め、潮の香りを吸い、水辺で体をあたためる。海のそばの暮らしの心地よさは、北欧も三陸も変わりません。

今も、島は隆起している

群島の島々は、大昔に氷河が大地を押しつぶし、その重みから解き放たれた土地が、今もゆっくりと持ち上がり続けて生まれたものです。この隆起は今なお続いていて、海の底だった場所が少しずつ顔を出し、浅瀬が草地に変わり、新しい小島が育っています。長い時間の目で見れば、この海の地図は、今も静かに描きかえられている途中なのです。島の人々が、水の深さや潮の流れをよく知る者の知恵を代々受けついできたのは、そのためです。刻々と姿を変える海と向きあいながら暮らす。それが、群島に生きるということです。

水辺の火と蒸気を、岩手でも

海や湖のそばで、火をたき、蒸気を浴びて、水へ入る。この水辺の楽しみは、岩手の暮らしにも取り入れられます。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、水と火を行き来する心地よい時間をご提案しています。水辺のサウナの話も、店でどうぞ。

写真: Chi King (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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