YOMIMONO / サウナの科学 SCIENCE

同じ90度が、同じ熱さ
とは限らない。

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2024年5月29日 / 最終更新日:2026年8月1日

サウナ巡りをしていると、不思議に思うことがあります。同じ90度の表示なのに、あの施設のサウナは、なぜかやわらかい。こっちの90度は、肌に刺さるように熱い。温度計は嘘をつかないはずなのに、体の感想はまるで違う。今日は、この「体感温度の謎」を、やさしく解いていきます。種を明かせば、サウナの熱さを決めているのは、温度だけではないのです。

湿度が、熱の伝わり方を変える

一番の主役は、湿度です。乾いた空気は、実は熱を伝えるのが下手です。だから乾燥した90度には、なんとか座っていられる。ところが、そこにロウリュの蒸気が加わると、事情が一変します。湿った空気は熱をよく伝え、さらに、蒸気が肌の上で水に戻るとき、抱えていた熱、いわゆる潜熱を、肌にどっと手渡していきます。おまけに、湿度が上がると汗が蒸発しにくくなり、汗で体を冷やす仕組みまで効きにくくなる。ロウリュの直後、温度計はほとんど動いていないのに、体感がぐっと熱くなるのは、この三段構えのせいです。サウナの熱さは、温度と湿度の掛け算だと覚えてください。(ロウリュの話は、こちら。)

石の量は、熱の質に出る

二人目の主役が、輻射です。サウナ室では、熱い空気だけでなく、熱くなったストーブや石、壁からも、遠赤外線の熱がまっすぐ体に届いています。ここで効いてくるのが、サウナストーンの量。石は温まるのに時間がかかるぶん、いちど蓄えた熱を長く手放しません。石をたっぷり積んだヒーターは、その蓄えた熱で安定した輻射を放ち、ロウリュの蒸気もまろやかで長持ちします。同じ温度でも、石の多いサウナの熱は、どこか厚みがあって、やわらかい。焚き火の遠火でじんわり温まる感覚に近く、体の芯まで届きます。ハルビアのヒーターに石がどっさり積めるのは、この熱の質のためです。(石の話は、こちら。)

空気の流れと、座る高さ

三人目が、空気の動きです。よどんだ空気の熱さと、静かに動く空気の熱さは、感じ方が違います。適切に換気されたサウナは、熱いのに息が楽で、いつまでも座っていられる。そして、座る高さ。熱い空気は上にたまるので、上段と下段では、体感で大きな差があります。同じ部屋の中に、熱めの席とやさしい席が両方ある。これはサウナの親切な設計です。(換気の話は、こちら。)

体は、温度計ではない

そもそも私たちの肌は、空気が何度あるかを測っているわけではありません。肌が感じているのは、熱が体に流れ込んでくる勢いのほうです。同じ90度でも、乾いていれば熱の流れはゆるやかに、湿っていれば急流のように届く。だから、温度計の数字と、体の正直な感想は、しばしばずれるのです。真冬に鉄の手すりと木の手すりを触ると、同じ気温なのに鉄のほうがずっと冷たく感じる。あれと、じつは同じ理屈です。数字は、その場の一面しか映してくれません。最後にあてになるのは、いつだって、自分の肌が受け取っている感想のほうなのです。(自分の適温の探し方は、こちら。)

数字ではなく、心地よさを

こうして見ると、「何度のサウナが好きか」という問いが、少し変わって聞こえてきませんか。大事なのは温度計の数字ではなく、湿度と輻射と空気が織りなす、熱の質です。低めの温度にたっぷりのロウリュという本場フィンランドの入り方が心地よいのも、この掛け算が上手だから。数字の自慢より、心地よさの追求を。それがサウナの熱の、大人の楽しみ方です。

あなた好みの熱を、つくる

岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、「あなたがいちばん心地よい熱」から逆算したサウナづくりをお手伝いしています。熱いのが好きな方も、やわらかい蒸気が好きな方も。おすすめのヒーターと石の組み合わせ、じっくりご相談ください。

写真: Lauren Stevens (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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