Sauna Guide — Hachimantai & Shizukuishi
八幡平・雫石のサウナ施設
八幡平は岩手と秋田の県境に広がる高原で、標高1,000m超の湿原と火山群が連なる。フィンランドの湖水地方と緯度はほぼ同じで、初夏から秋にかけての気候は北欧に近い。岩手山の麓・雫石は盛岡から30〜40分という近さにありながら、温泉と自然環境の点で別世界だ。高原サウナ、秘湯サウナ、山岳サウナ——このエリアの施設には都市部の温浴施設とは異なる「外から来た人間が求めるもの」がある。盛岡から日帰りで「非日常」を体験できるのが八幡平・雫石エリアの強みだ。
星降る山荘 七時雨山荘
12℃。岩手山麓・七時雨山のふもとにあるこの山荘の水風呂は、春の雪解け水に由来する冷たさを持つ。88℃との組み合わせで温度差76℃。数字よりも、水の質がまったく違う。山の岩盤を通じてゆっくりろ過されたミネラルが溶け込んだ水は、肌に触れた瞬間の柔らかさが内陸の施設とは異なる。
「七時雨」という名前は独特だ。「ひちとしぐれ」という読み方をする説があり、山の天気の変わりやすさを表すともいわれる。予約制のため、訪れる時間はほぼプライベートな空間になる。八幡平市の夜空は光害がなく、天の川が肉眼で見える。「星降る山荘」という名前は、サウナ後に空を仰いだ人間が付けたとしか思えない説得力がある。3,000円という料金はこの体験に対して十分な対価だ。
安比温泉 白樺の湯
安比高原は東北最大級のスキーリゾートで、冬は全国から多くのスキーヤーが集まる。白樺の湯はその安比高原に位置する温泉旅館で、フィンランドの白樺(コイブ)の林を歩いているような感覚で到達できる。フィンランドでは白樺の小枝と葉を束ねた「ヴィヒタ」でサウナ中に体を叩く習慣があるが、白樺にそういう縁があることを知っていると、この施設の名前の意味が深くなる。
84℃はスキー後にじっくり体を温める設定だ。激しく体を追い込むためではなく、冷えた体の深部から温め直し、翌日の滑りに備えるためのサウナ。20℃の水風呂で適度に体温を下げ、再び温泉へ。この循環が体の回復を助ける。冬の雪原を眺めながらの外気浴は、北欧のアヴァント(厳冬のサウナ)体験に最も近い感覚が日本で得られる場所のひとつだ。1,200円で日帰り利用可能。
橋場温泉 新はしばの湯「雫石あねっこ」
「あねっこ」は岩手弁で「お姉さん」のことだ。雫石の方言が施設名に使われているという点で、この施設が地域のためのものだという姿勢がにじみ出ている。橋場温泉は雫石町の橋場地区に湧く温泉で、岩手山の東麓に位置する。雫石は御所湖(つなぎ温泉も含む)と岩手山に挟まれたエリアで、温泉と自然の豊かさは盛岡市街と別格だ。
520円で90℃のサウナと天然温泉が使えるのは地域密着型施設の強みだ。水風呂20℃は雫石の自然水で、肌あたりが柔らかい。岩手山を望む露天風呂との組み合わせで、サウナ後に岩手山を正面に見ながら外気浴する体験は盛岡市内では得られない。岩手山頂を目指す登山者が下山後に立ち寄ることも多く、「頂上に登って、温泉に入って、サウナに入る」という充実した一日が520円で仕上がる。
網張温泉 ありね山荘
300円。この数字が全てを語っている。網張温泉は岩手山の西麓に位置する温泉地で、秋田との県境に近い山間にある。「ありね」は岩手山の別名・有根(ありね)に由来する。この山荘は地元の登山者や自然愛好家に長く愛されてきた。
88℃のサウナと14℃の水風呂は、岩手山の雪解け水と火山熱が共存する土地ならではの組み合わせだ。14℃の水は岩手山の恵みで、5月の残雪を踏んで歩いてきた体が沈んだ瞬間の「ああ、来た」という感覚が格別だ。観光客より地元の人間と登山者が多い雰囲気で、サウナ後の会話は盛岡の温浴施設とは異なる。「どこから登ってきた」「今日の山頂はどうだったか」という話題が自然に生まれる空間だ。岩手山を愛する人間にとって、300円で入れるここは聖地に近い。
DATA NOTE
施設情報(温度・料金)はD'STYLEが実際に訪れた際の情報をもとにしています。温度・料金・営業時間は変更されることがありますので、最新情報は各施設の公式情報でご確認ください。情報は2026年10月時点のものです。
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