Sauna Guide — Hanamaki & Shiwa
花巻・紫波のサウナ施設
「雨ニモマケズ」を書いた宮沢賢治は花巻の人間だ。彼が愛した北上川の流域、北上山地と奥羽山脈に挟まれたこの盆地には、豊富な地下水と複数の温泉地が集まっている。紫波町には118℃のサウナがある。ラ・フランス(西洋梨)の産地としても知られるこのエリアで、温泉とサウナの施設が充実しており、盛岡から車で30〜40分という距離感も、週末のドライブサウナには好都合だ。
ひづめゆ
「ひづめ」は蹄(ひづめ)のことで、農耕馬に親しんだ紫波の土地を感じさせる名前だ。112℃という温度は、ただ設定を高くすれば出せるわけではない。サウナ室の広さ、対流設計、ヒーターの容量、換気のバランスがすべて噛み合って初めて、息が詰まらず体が蒸せる高温になる。この施設はその設計がちゃんとしている。入った瞬間に「熱い」と感じるが、すぐに「これは行ける」と体が応答する、あの感覚だ。
水風呂は18℃で、高温サウナとの組み合わせでは温度差が94℃にもなる。体感では水風呂がいつもより冷たく感じる。サウナ室を出た直後の皮膚が100℃以上の空気で温められているから、18℃でも刺さるように感じるのだ。外気浴のスペースも確保されており、紫波の空気の中でととのえる。地元の常連が毎日通う施設で、週末は賑わう。盛岡からも車で30分かからず、わざわざ来る価値が十分にある。
ラ・フランス温泉館
118℃のサウナがここにある。「ラ・フランス」はフランス原産の西洋梨の品種で、紫波町はラ・フランスの産地として知られる。温泉館の名前にそれを冠しているくらい、この地域にとって馴染みの深い果物だ。
118℃は、競技サウナの世界に近い温度帯だ。フィンランドでは競技者が110〜120℃のサウナ室で耐久を競う大会がある。ただし競技と日常使いでは目的が違う。この施設の118℃は、3〜5分という短い滞在でも十分な発汗が得られる設定で、体への負担をコントロールしながら高温を楽しむことができる。水風呂は15℃で、サウナとの温度差は103℃。少し大げさに言えば、1セットでフィンランドの夏と冬を体験するような感覚だ。温泉は別棟で、天然温泉の質も高い。800円という料金でこの環境が使えるのは、地方の温浴施設ならではの価値だ。
花と緑と安らぎの湯 東和温泉
花巻市の旧東和町エリアにある温浴施設。「花と緑と安らぎの湯」という名前はやや長いが、施設に入るとその通りの雰囲気がある。男性サウナが104℃で女性サウナが114℃という逆転現象が珍しい。温度計の数字を見るまで気づかないが、聞いてみると女性の方が高温志向だということを実感させられる。
700円で104℃のサウナと天然温泉が使えるのは、花巻エリアの地元施設としての強みだ。朝7時から営業しており、早朝のサウナを習慣にしている人にとっても使いやすい。東和町は花巻市内でも農業地帯で、田園風景の中にある施設というロケーションが外気浴の質を上げている。花巻インターから20分ほどの距離で、車があれば盛岡からも十分通える範囲だ。
湯の杜 ホテル志戸平
豊沢川沿いの渓谷に位置する志戸平温泉。江戸時代から続くとされる温泉地で、ホテル志戸平はその中核施設だ。「湯の杜」という副題が付いているように、木々に囲まれた静かな温泉環境が特徴で、日帰り入浴でもサウナを利用できる。
88℃のサウナは長くゆっくり入れる設定で、温泉との相乗効果が高い。温泉旅館のサウナに何を求めるかと言えば、激しく追い込むことではなく、温泉との相乗効果で体の深部から温まることだ。ここの湯は無色透明の単純温泉で、肌への刺激が少なく長く浸かれる。サウナで発汗して温泉で保温する、という入り方が体にいい循環を生む。花巻空港から10〜15分というアクセスの良さから、仙台や東京からの旅客にも使われている施設だ。
山の神温泉 なごみの湯
「山の神」という地名が持つ土着感が好きだ。古くから農山村では山の神が農耕や狩猟を守護すると信じられており、岩手の各地に「山の神」を冠した場所が残る。花巻市矢沢のこの施設も、里山と田園が交差する場所にある。
92℃・20℃という設定は使いやすい中温帯で、初めてサウナを体験する人にも、高温疲れを感じている常連にも対応できる。外気浴スペースは緑に囲まれており、特に新緑と紅葉の時期は気持ちがいい。花巻インターから近く、週末に盛岡から流れてくる客も多い。岩手の温浴施設の良さは「ちょうどいい規模感」にあると思っていて、この施設はまさにそれだ。大きすぎず、設備が管理の手の届く範囲に収まっている。
鉛温泉 藤三旅館
宮沢賢治が愛した「山の湯」として知られる鉛温泉の老舗旅館。「鉛」という地名の由来は諸説あるが、かつてこの山中に鉱脈があったとも言われる。豊沢川の支流に沿った山間の一軒宿で、花巻温泉郷の中でも奥まった場所にある。車で来るからこそ、山の一軒宿に「来た」という感覚がある。
立ち湯で有名な「白猿の湯」は深さ125cmの天然岩風呂で、柱状節理の岩盤から直接湧き出る源泉に立って入る。サウナは90℃・20℃で、山の湯でサウナを挟む体験は、都市部では得られない。特に冬、雪の中で外気浴をしながら湯気が立ち上る様子は、北欧のサウナ文化と岩手の自然が重なる瞬間だ。日帰り入浴600円というのは旅館としては控えめで、気軽に立ち寄れる。
花巻温泉 ホテル紅葉館
花巻温泉郷は台温泉、志戸平温泉、花巻温泉など複数の温泉地が集まるエリアで、その中心的存在として花巻温泉がある。ホテル紅葉館はその花巻温泉の宿で、紅葉の季節に名前が映える。80℃・22℃の設定は、温泉旅館のサウナとして落ち着いた組み合わせだ。温泉旅行の文脈では、このくらいの温度が体に合う人も多い。
旅館サウナの価値は追い込みにはない。旅の疲れをほぐし、翌日の体を整え、良質な睡眠に導くことにある。80℃で15分ゆっくり入り、22℃の水風呂で体温を落ち着かせ、温泉でもう一度温まって湯上がりを迎える。この流れが旅の疲労回復に効く。花巻は松の木が多く、温泉地の景観も独特で、露天風呂からの眺めが気持ちいい。日帰り利用で1,000円。
DATA NOTE
施設情報(温度・料金)はD'STYLEが実際に訪れた際の情報をもとにしています。温度・料金・営業時間は変更されることがありますので、最新情報は各施設の公式情報でご確認ください。情報は2026年10月時点のものです。
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