木の板に囲まれた三角のガラス面と、雪のテラス、凍った海、水着の男性
YOMIMONO / 火のある暮らしの話 #06

フィンランドとサウナ。
2000年の歴史と、本場の入り方。

文・橋本大治(D'STYLE 代表)|読了目安 22分

公開日:2023年8月19日 / 最終更新日:2026年9月27日

サウナが好き過ぎて、フィンランドへ渡りました。HARVIA本社をたずね、現地のサウナ施設の仲間や施工の同業者に会い、フィンランド各地を施設から施設へ、毎日何施設もはしごしてきました。もはや北欧サウナ研究会です。自称ですけど(笑)。ととのいが、氷点下20℃の外気を浴びながらの移動中にやってきたこともありました。今日は、そこで体に刻んだものの話から始めて、フィンランドのサウナ文化の全体を、一本にまとめてお伝えします。

凍った海に、何度も入りました

ヘルシンキの海辺にLöyly(ロウリュ)という有名なサウナがあります。冬、目の前の海は凍っています。サウナで温まった人たちが、氷に開けた穴に次々と入っていく。アヴァント(avanto)といいます。

私も入りました。それも一度ではなく、いろんな施設の海や湖に、何度も何度も飛び込みました。外気温は昼間でも氷点下17℃。入った瞬間、全身に針を刺されるような冷たさです。正直、正気の沙汰じゃありません。

でも、上がってからのあの感じ。体の内側から湯気が立って、頭がすっと静かになる。そして世界が、やけに鮮やかに見えるんです。これは入った人にしかわからない。うまく説明はできないけれど、私は何度もそれを味わってきました。

忘れられないのは、Löylyへ向かう道すがら見かけたおじいちゃんです。サウナ上がりですらなく、散歩のついでに、ひょいと氷の海へ入っていきました。あの国では、それがふつうの光景でした。

サウナって、熱い部屋のことじゃない。
温めて、冷まして、休む。その一連の時間のことなんだと思います。

ハルビアが設計した施設で、答え合わせをした

滞在中、本国ハルビア社が設計した施設にも入りました。うちはハルビアの岩手県正規施工販売代理店ですから、これは仕事の答え合わせでもあります。

座面の高さ、湿度、ヒーターとの距離。その兼ね合いが、見事に決まっていました。熱いのに、やわらかい。長く座っていられるのに、ちゃんと汗が出る。いいサウナ室は、やっぱり設計なんです。まぐれじゃない。それを本家のつくりで確かめられたのは、大きな収穫でした。

本当の学びは、現地の人がくれた

今回の旅で、いちばんの財産になったもの。それは施設でも資料でもなく、現地の人とつながれたことでした。ユバスキュラでは、その土地のサウナづくりを引っ張る仲間たちが迎えてくれて、本当にたくさんのことを教わりました。本場で第一線に立つ人が、惜しみなく手の内を見せてくれる。汗をかいて、水風呂で震えて、火の前で、酒も飲まずに語り合いました。こんな贅沢な学びは、そうそうありません。

サウナ室の設計、ヒーター選定の考え方、ベンチとヒーターの位置関係、断熱と遮熱の使い分け、遠赤外線とサウナストーンの関係。そして「設計と実践は違う」という、現場に立ち続けた人間の口からしか出てこない話。本やカタログをいくら読んでも、たどり着けないところでした。日本で常識とされているサウナ室のつくり方を、根底から覆される発見がいくつもありました。本場で受け取ったこの学びを、うちがこれから岩手でつくるサウナ室に、ぜんぶ落とし込んでいきます。

フィンランド人の暮らしとサウナ

フィンランドの人口は約550万人です。サウナの数は約300万とも言われます。つまり日本でいう「テレビのある家」くらいの普及率で、フィンランドにはサウナがある。集合住宅には共用サウナがあり、別荘には小屋サウナがある。議会にも、大使館にも、軍の基地にも、サウナがあります。

フィンランドの開拓時代、新しい土地に移り住む家族が最初に建てたのはサウナ小屋でした。住居ではなく、サウナです。その理由は実用的なものでした。煙で燻したサウナ室は雑菌が少なく、出産に使われた。怪我の手当てや、病人の療養にも使われた。体を洗う浴室として、蒸気で温まることで汗をかき、清潔を保つための場所として機能した。冬の寒さの中で清潔でいるには、サウナが必要だった。

そこから「家を建てるなら、サウナも当然ある」という感覚が数百年かけて根付いていきました。

「サウナのない家は、家ではない。」
— フィンランドの古いことわざ

これは誇張でもなく、フィンランドの不動産市場では「サウナあり」かどうかが物件価値に直結します。サウナなしの物件はそれだけ値が下がる。それほど実生活に組み込まれています。

現代のフィンランドのマンションには、たいてい共同サウナがあります。週に一度、住民が時間帯を分けて使います。新築マンションのカタログには水回りの仕様と同じように、サウナの装備が書かれています。一戸建ての場合、バスルームにサウナがセットになったプランが一般的です。日本で「お風呂」と呼ぶものが、フィンランドでは「サウナのある浴室」を指すことが多い。

フィンランドでサウナが単なる入浴施設でない理由の一つが、そこでの会話です。裸になって汗をかく場では、社会的な身分や立場が薄れます。上司と部下、客と売り手、政治家と市民。その壁がなくなる。だからサウナで本音が出る。ビジネス文化では、サウナで商談を進めることが珍しくありません。会議室よりもサウナのほうが、相手の本音を引き出しやすいとされています。外交の場でも、フィンランドの首脳がゲストをサウナに招いてきた歴史があり、フィンランド語に「サウナ外交(saunadiplomacy)」という言葉があるほどです。

「サウナでは、人は素のままでいられる。地位も肩書きも、服と一緒に脱ぐ。」
— フィンランドの言い伝え

2000年の歴史

フィンランドのサウナの歴史は、文献に残るだけでも2000年以上になります。「サウナ」という言葉はフィンランド語の固有語であり、起源はいまだ諸説あります。

最古のサウナ:地面を掘った穴

考古学的な証拠によると、フィンランド最古のサウナは、地面に穴を掘り、その中に石を積んで焚き火で加熱するという形式だったと考えられています。屋根は土か皮で覆い、人が入れるだけの空間があった。この形式は北方の遊牧民族の間に広く見られ、フィンランドだけの発明ではありません。しかし、フィンランドでは農耕と定住が進んだ後も、サウナが集落の中心的な建物として残り続けた。その持続性こそがフィンランドサウナの独自性です。

サヴサウナ:煙で燻す原初の形

フィンランドの伝統的なサウナは「サヴサウナ(savusauna)」と呼ばれる煙突のない形式です。薪を燃やして石を加熱し、煙で満たされた状態で十分に温まったら外へ出て換気する。煙が抜けた後、ススで黒くなった室内に入る。煙突がないぶん石に時間をかけて熱が伝わり、ロウリュをしたときのスチームがほかの形式より「まろやか」だと言われます。現代のサウナ愛好家の間でも、伝統的なサヴサウナ体験を求める人は多い。今でも一部の農村やサウナ文化の保存施設で体験できます。

産室として、洗礼の場として

フィンランドでは20世紀初頭まで、子どもはサウナで産まれることが多かった。清潔な蒸気に満たされた空間は、当時の衛生概念で「最も清潔な場所」と考えられていた。産婆はサウナに煮沸した湯を用意し、出産後の母子を温め、清めた。この慣習を示す文書記録は19世紀に多く残っています。

フィンランド語の格言に「サウナで治らない病はない」というものがあります(Jollei viina, terva tai sauna auta, niin tauti on kuolemaksi.「酒も樺tar油もサウナも効かぬなら、その病は死に至る」)。骨折や筋肉の痛みの治療、風邪の初期症状の対処、皮膚の洗浄。すべてがサウナの中で行われてきました。「サウナは貧者の薬局だ」とも言われます。

フィンランドの一部の地域では、亡くなった人の体をサウナで清める習慣が長く続きました。最後に清潔な状態で送り出すという意味では、サウナは生と死の両方に立ち会う場所だった。

サウナと「境界」の観念

フィンランドの民俗学では、サウナは「この世とあの世の境界」として語られてきた側面があります。産まれる場所であり、死者を清める場所でもあるという事実は、サウナが「始まりと終わり」にある場として機能していたことを示す。フィンランドの一部の地域では、サウナに「サウナのエルフ(saunatonttu)」が住んでいるという伝承もありました。火の番人として住み、粗末に扱うと怒る存在です。

都市化とサウナの変容(19〜20世紀)

18〜19世紀にかけて都市化が進むと、個人の農家にサウナを持つことが難しい人が増えた。代わりに「公衆サウナ(julkinen sauna)」が普及し始めます。特に19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヘルシンキをはじめとする都市に公衆サウナが次々と作られた。労働者階級の人々が一週間の汚れを落とす場所として、サウナは社会インフラのような位置づけになった。週に一度、土曜日にサウナへ行く習慣が「サウナの日」として定着したのもこの時期です。

1939〜1940年の冬戦争(フィンランド対ソ連)の記録には、前線にサウナを作ったという記述が残っています。フィンランド軍は野戦サウナを移動式で設置し、戦場でもサウナに入る時間を確保した。単なる清潔保持ではなく、精神的な支えとしてのサウナの役割を示しています。

2020年、ユネスコ無形文化遺産に登録された

2020年12月17日、ユネスコはフィンランドのサウナ文化を無形文化遺産に登録しました。正式名称は「Finnish sauna culture(フィンランドのサウナ文化)」。歌舞伎や能楽、和食なども登録されているこの制度で、サウナが認められた日です。

登録されたのは、フィンランドのサウナ文化全体です。特に煙サウナ(サヴサウナ)の伝統を中核に置きながら、ヴィヒタ(白樺の枝束)の作り方、焚き方のノウハウ、サウナに関わる社会的なコミュニケーション全体が一つにまとまっています。

フィンランド政府がユネスコ申請を進めた背景には、電気式サウナや赤外線サウナの普及によって薪で焚く伝統的なサウナが減っていること、ロウリュの習慣を知らない世代が出てきたことへの危機感がありました。登録申請はフィンランドの文化省が主導し、サウナ愛好家団体、職人、コミュニティが協力して資料を作成。約2年の審査を経て、2020年の審査会で正式に認められました。

「330万基」の数字を追う

「フィンランドには人口550万人に対し、サウナが330万基ある」。この数字を、一度は目にしたことがあるかもしれません。私たちも長く、そう紹介してきました。ですが出典を一つずつ辿っていくと、最後に行き着くのは統計局の一通のメールでした。そこに書かれていたのは「正確な数字は存在しない」という言葉です。

「人口550万人に対しサウナ330万基」という数字は、ユネスコの無形文化遺産の決議文書(2020年、第15回政府間委員会、決議番号15.COM 8.b.27、無形文化遺産登録No.01596)に載っています。世界中のサウナ紹介記事がこの数字を引用してきました。ただし、この文書自体が独自の調査をしたわけではありません。どこかで作られた推計を、そのまま引き継いだ形です。

サウナ研究を専門とするJack Tsonisは、論文"Sauna Studies as an Academic Field"(Literature & Aesthetics 26, 2016)の中で、この数字の出所をフィンランド統計局に直接問い合わせています。返ってきた答えはこうでした。2015年に住宅として登録されているサウナは1,607,279基。ただしこの数字には、サマーコテージのサウナ(推定約50万基)や、集合住宅・ジム・プールなどの共用サウナは含まれていません。そのうえで統計局は「200万基超と推計はできるが、正確な数字は存在しない」と回答しています。この回答は、Tsonisの論文に2016年7月15日付の統計局からのメールとして記録されています。

つまり330万基という数字は、統計局の公式な集計ではなく、そこから先の推測の産物だということです。

サウナ研究者のLassi Liikkanen(saunologia.fi)は、総数を250万から300万基という幅で示しています。Liikkanenの推計によれば、内訳としては電気式が全体の約60%を占め、残りが薪式です。伝統的な煙サウナ(savusauna)は全体の中でも最大1%ほどにすぎないとされています。数字に幅があること自体が、正直な報告の形なのだと思います。

興味深いのは、そもそもこの手の統計を取るよう働きかけてきたのが、1937年設立のフィンランドサウナ協会だという点です。サウナがあまりに日常に溶け込みすぎていて、行政の側からすると「わざわざ数える対象」になりにくかった。数えてほしいと声を上げたのは、いつも当事者の側でした。

日本にも、自宅サウナが何棟あるかという公的な統計はありません。岩手も同じです。せめて、私たちが実際に数えられる数字だけは、正直にお伝えしたいと思います。これまで施工してきた自宅サウナ・サウナ小屋のうち、薪サウナストーブを選ばれた方と電気サウナストーブを選ばれた方の比率は、フィンランドの推計(電気式約6割)とは逆の傾向にあります。岩手は薪が身近に手に入る土地柄で、薪ストーブでの暖房に慣れているお客様も多く、薪式のサウナストーブを選ばれる方が体感として多い印象です。

330万基という数字が独り歩きした背景には、誰も悪意なく、ただ便利な数字を引用し続けてきた事情があるのだと思います。大切なのは、数えた数字と推計した数字を混ぜないこと。そして推計には、必ず「誰の推計か」と「推計です」と書き添えることです。

日本のサウナとフィンランドのサウナの違い

日本でもサウナブームが続いています。「ととのう」という言葉が流行し、サウナ施設の新規開業が相次いだ。ただ、日本のサウナブームの主役は「都市型の施設」です。電気ヒーターと高温乾燥サウナ、水風呂と外気浴のセット。フィンランドの人が「サウナ」という言葉で思い浮かべるものとは、かなり違います。

これらは優劣ではなく、文化の違いです。日本でフィンランド式のサウナを体験したい場合は、木材を使ったロウリュ対応のサウナ室が必要になります。

フィンランドサウナの基本数値

一般的な温度:70〜90℃(石の上の温度)

湿度:ロウリュなしで10〜20%、ロウリュ後は一時的に40〜60%程度まで上昇

滞在時間:1セット10〜20分が目安。休憩を挟んで3〜4セット

冷却:湖・川・雪・水シャワーなど。「熱い→冷やす」のサイクルが重要

ヴィヒタ:白樺の枝束。体をたたいて血行を促進し、香りで空気を整える

フィンランド式サウナの楽しみ方

フィンランドのサウナ文化を世界に伝える公式団体「Sauna from Finland」が紹介している楽しみ方を参考に、岩手・盛岡で暮らす私たちなりにお伝えします。

その一 / とにかく、急がない

フィンランド式で、いちばん大切にされているのがこれです。時計も、スマホも、置いていく。「あと何分」も、「次はこれ」も、いったん忘れる。入る前に、お腹いっぱい食べすぎないこと。そして、こまめに水分をとること。これだけ守れば、あとは、ただ、のんびりと。

その二 / まず、シャワーで流す

サウナに入る前に、さっとシャワーを浴びて、一日のほこりや汗を流します。自分のためでもあり、次に入る人への心づかいでもあります。指輪やメガネは、熱くなるので外しておく。

その三 / 心を、ひらいて入る

ドアを開けるとき、少しだけ心をひらく。ただ、「今、ここ」に体をあずけるだけ。木の香り、じんわりとした熱、遠くで薪のはぜる音。五感を、そっと目の前のことに向ける。

その四 / 体の声を、聞く

「長く入ったほうがえらい」なんてことは、ひとつもありません。我慢くらべをする必要も、無理をして限界に挑む必要も、まったくない。熱いと感じたら、下の段におりる。つらくなる前に、外に出る。自分の体が心地よいと言うところに、ただ従う。それが、いちばん正しい入り方です。

その五 / ロウリュを、味わう

熱した石に、ひしゃくで少しだけ水をかける。ふわりと立ちのぼる蒸気、これがロウリュです。フィンランド語で、サウナの魂とも呼ばれるもの。湿度がふっと上がり、体をやわらかく包む熱に変わる。ハルビアのサウナヒーターにたっぷりと積まれた石が生む、力強くもまろやかな蒸気は、一度知ったら忘れられません。人と入るときは、「もう一杯、いいですか」と、ひと声かけてから。それも、フィンランド流の心づかいです。

霧氷で白くなった道路沿いの白樺林
フィンランド研修で見た、道路沿いの白樺林。枝の先まで霧氷で白くなっていました。

その六 / 冷やして、休む

ひとしきり温まったら、いさぎよく外へ。冷たいシャワー、水風呂、あるいは外の風。フィンランドの人たちは、夏なら湖に飛びこみ、冬なら雪の中へ。そして、体を冷やしたら、ラウンジや外気の中で、しばらくぼんやりと休む。この「温める・冷やす・休む」の落差こそが、サウナのいちばんの醍醐味。岩手の澄んだ外気は、この外気浴に、これ以上ないほど向いています。

その七 / 好きなだけ、くり返す

温めて、冷やして、休む。この流れを何回くり返すか、フィンランドには決まった回数などありません。三回でも、二回でも、その日の体が「もう十分」と言うまで。数をこなすことが目的ではなく、心地よさを味わうことが目的だから。

その八 / ヴィヒタで、肌をたたく

白樺の若い枝葉を束ねた「ヴィヒタ(ヴァスタ)」で、やさしく肌をぽんぽんとたたく。血のめぐりをうながし、森の香りに全身を包まれる、フィンランドならではの贅沢です。

その九 / 最後は、ゆっくり戻る

サウナを出たあと、あわてて日常に駆け戻らないこと。火照った体が、少しずつ静かになっていく、あの余韻。ぼんやりと空を眺めたり、冷たい一杯を味わったり。この「戻るまでの時間」こそが、サウナがくれた贈り物です。

参考:Sauna from Finland「10 Tips for Enjoying Sauna the Finnish Way」(saunafromfinland.com)。本記事は同団体の紹介内容を参考に、D'STYLEが独自に再構成したものです。

サウナのフィンランド語

世界中の言語にそのまま輸出された、ほぼ唯一のフィンランド語は何でしょう。答えは、sauna(サウナ)。英語でもドイツ語でも日本語でも、サウナはサウナです。千年以上の歴史を持つこの言葉は、フィンランドが世界に贈った、いちばん有名な単語なのです。

挨拶の言葉

キートス(kiitos)は、ありがとう。フィンランド旅行で一つだけ覚えるなら、これです。モイ(moi)は、やあ、という気軽な挨拶。別れ際はモイモイ(moi moi)と二回重ねます。ヒュヴァー・サウナ(hyvää saunaa)と言えば「良いサウナを!」。これからサウナに向かう人への、あの国らしい送り出しの言葉です。サウナに入る前と、上がった後、その両方に専用の挨拶が存在する国。それだけで、彼らのサウナへの本気が伝わってきます。

サウナまわりの単語

ロウリュ(löyly)は蒸気、ヴィヒタ(vihta)は白樺の若枝を束ねたもの、キウアス(kiuas)はサウナヒーターのこと。ハルビアの製品名やカタログにも、フィンランド語がたくさん隠れています。アヴァント(avanto)は、凍った湖に開けた穴。そこに入るのがアヴァントウインティ、いわゆる氷泳です。テルヴァ(terva)は白樺から採るタールで、サウナの香りづけや石けんにも使われる、あの国の懐かしい匂いです。

自然と暮らしのことば

メッツァ(metsä)は森、ヤルヴィ(järvi)は湖、ルミ(lumi)は雪。国土の多くを森と湖が占め、長い冬を雪とともに暮らすフィンランドを、この三語がそのまま描いてくれます。コティ(koti)は家。日本語に「木漏れ日」や「雪見」があるように、その土地の暮らしが濃い言葉ほど、そのまま文化の地図になります。岩手の私たちにも、しっくり来る単語たちです。

シス:あの国の背骨

シス(sisu)。直訳の難しい言葉で、困難のなかで静かに粘り抜く力、とでも訳されます。派手な根性論ではなく、淡々と、あきらめず、やり抜く芯の強さ。長く暗い冬を、サウナと工夫で楽しみに変えてきた国民性の背骨にあたる言葉です。氷点下の湖に穴を開けて入り、上がってきてにっこり笑う人たち。あれこそがシスです。豪雪と長い冬を毎年やり過ごし、それでも春を待つ岩手の私たちにも、この言葉はどこか通じるものがあると思いませんか。

おまけの一語、カルサリカンニ

最後に、思わず笑ってしまう一語を。カルサリカンニ(kalsarikännit)。意味は「外出の予定もなく、家で下着姿のまま、ひとりで気ままに飲むこと」。これ専用の単語が、ちゃんと存在するのです。国が観光の絵文字にまでした、由緒正しい過ごし方。サウナ上がりの、誰にも会わない夜の一杯。あの、しみじみとした幸せに、わざわざ名前を付けた国を、私たちは深く信頼しています。

岩手は、フィンランドに似ている

帰りの飛行機で考えていたのは、岩手のことでした。長い冬、雪、静かな森、豊富な木材。環境だけなら、岩手はフィンランドにかなり似ています。真冬の外気浴なら、むしろ本場級のものが庭先にある。足りないのは、暮らしの中のサウナだけ。

日本でも2020年代から自宅にサウナを作る方が増えています。バスルームの一角に設置するユニットタイプから、庭やウッドデッキに建てる独立型のサウナ小屋まで。当社にもこうした相談が年々増えています。フィンランドのように「家に当然あるもの」になるまでには時間がかかるかもしれません。しかし「自宅にサウナがある暮らし」を選ぶ人が岩手にも増えていることは確かです。一度体験したら、外の施設に行かなくて済む便利さと、自分のペースで使えることに気づく方が多い。

それなら、つくればいい。本場で体に刻んだつくり方で、岩手の木も使いながら、この土地にサウナの文化を根付かせたい。うちのショールームにはサウナがあります。まず蒸気を浴びに来てください。氷の海の話の続きは、火の前でしましょう。

よくある質問

Q. 自宅にサウナを作るとき、最低限の広さはどのくらいですか。
一人用のコンパクトなユニットであれば1.2畳程度のスペースから設置できます。二人以上で使う場合は1.5畳から2畳が目安です。既存の浴室の一角に設置する場合も、現地の採寸をしてから判断します。

Q. 日本でフィンランド式のサウナを作れますか。
作れます。ロウリュに対応した石付きのサウナストーブを使い、防水・断熱を正しく施工すれば、自宅にフィンランド式のサウナ室が作れます。庭への独立棟、既存の浴室リフォーム、ガレージ改装など方法はいくつかあります。D'STYLEでは現地を見てから最適な方法をご提案しています。

Q. ロウリュに対応したサウナストーブはどんなものですか。
石を上に積めるストーブで、薪式と電気式があります。フィンランドを代表するメーカーのハルビア(HARVIA)は世界最大のサウナストーブメーカーで、薪式・電気式ともにロウリュ対応モデルを製造しています。D'STYLEはハルビアの岩手県正規代理店です。

Q. ユネスコ無形文化遺産に登録されると何が変わりますか。
登録自体に法的な保護効果はありませんが、国際的な注目が集まることで保護活動が加速します。フィンランドでは登録後、煙サウナ職人の育成支援や、サウナ文化の記録・普及活動が活発になりました。

Q. 賃貸住宅や集合住宅でも作れますか。
電気式の移動可能なタイプであれば賃貸でも使えるものがありますが、大掛かりな改装が必要な場合は基本的に持ち家向けです。まずご相談ください。

Q. 「ととのう」という概念はフィンランドにもありますか。
「ととのう」という日本語の表現自体は近年のものですが、「サウナを出た後の独特の感覚」はフィンランドでも昔から認識されていました。フィンランド語では「saunomi」(サウナに入ること)そのものが心地よい状態を指し、その後の清涼感を含めた体験全体を意味します。

参照した研究・資料

  • UNESCO Intangible Cultural Heritage, Decision of the Intergovernmental Committee 15.COM 8.b.27, Inscribed element No.01596 (2020) https://ich.unesco.org/en/Decisions/15.COM/8.b.27
  • Jack Tsonis, "Sauna Studies as an Academic Field", Literature & Aesthetics 26 (2016), pp.41-82 https://openjournals.library.sydney.edu.au/index.php/LA/article/view/11424
  • Lassi Liikkanen, saunologia.fi, "Finnish Sauna Essentials Part 2 – Variety and History of Finnish saunas" https://saunologia.fi/in-english/finnish-sauna-essentials-part-2/
  • Sauna from Finland, "10 Tips for Enjoying Sauna the Finnish Way" https://saunafromfinland.com/sauna-articles/10-tips-for-enjoying-sauna-the-finnish-way/

岩手・盛岡で自宅サウナをお考えの方は、ハルビア岩手県正規代理店のD'STYLEへ。機種選びから設置工事まで、あなたの暮らしに合わせたおすすめの一台をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。

写真: pan-opticon (Wikimedia Commons, CC BY 3.0)、Timo Newton-Syms (CC BY-SA 2.0)、Petritap (CC BY-SA 3.0)

本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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