YOMIMONO / フィンランドの週末 SATURDAY

土曜の夜は、
サウナの夜。

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2025年12月29日 / 最終更新日:2026年8月1日

フィンランド語には、曜日とくっついたサウナの言葉があります。ラウアンタイサウナ。直訳すれば「土曜サウナ」。ただの合成語ではなく、国民の暮らしのリズムそのものを指す言葉です。今日は、フィンランドの一週間の締めくくり方の話。

週に一度、体と週を洗い直す

電気サウナが普及する前のフィンランドでは、サウナを焚くのは薪も水も労力も要る仕事でした。だから毎日ではなく、週の終わりの土曜に、家族総出でサウナを焚いた。畑仕事や漁の一週間の汗を流し、体を清め、日曜の安息日を迎える。サウナ研究サイトのサウノロギア(saunologia.fi)やフィンランドサウナ協会が伝える通り、土曜サウナは体を洗う日であると同時に、一週間を心の中で締めくくる、区切りの儀式でした。現代のフィンランドでは毎日サウナに入れる家がほとんどですが、それでも「土曜の夕方はサウナ」というリズムは生きていて、夏至祭やクリスマスのサウナと並ぶ、暮らしの句読点になっています。

サウナは、聖なる場所だった

昔のフィンランドで、サウナはただの風呂ではありませんでした。子どもが生まれる場所であり、病人が養生する場所であり、時に旅立つ人を清める場所でもあった、暮らしのいちばん神聖な一室です。「サウナでは教会にいるように静かに振る舞いなさい」という古い言い回しが残っているほど。だから土曜、家族はまずサウナを掃き清め、ベンチを洗い、薪を組み、それから火を入れました。自分の体を清める前に、まず場を清める。この順番のなかに、フィンランドの人々が何百年もサウナに寄せてきた敬意と、週に一度きちんと暮らしを整え直す構えが、静かに表れています。

土曜サウナの、正しいだらしなさ

土曜サウナの中身は、驚くほど気取りがありません。夕方、まだ明るいうちに入り始める。家族が交代で、あるいは一緒に、何度もゆっくり温まる。あわてない。時計を見ない(時計の話)。サウナのあとは、マッカラと呼ばれる太いソーセージを焼いて、大人はロンケロ(グレープフルーツの炭酸割り)やビールを一杯。それで夜はおしまい、早めに眠る。この「がんばらなさ」こそが本体です。予定を詰めた週末より、サウナと軽食だけの土曜の夜のほうが、月曜の体が軽い。フィンランド人は、それを何百年も前から知っていました。

ヴィヒタと、白樺の香り

土曜サウナに欠かせないのが、ヴィヒタです。初夏の若い白樺の枝葉を束ねたもので、体をやさしくたたくと、血のめぐりが促され、青い森の香りが部屋いっぱいに満ちます。フィンランドの家では、夏至の頃にその年のヴィヒタを作って乾かし、冬の土曜に一枝ずつ湯で戻して使います。一年でいちばん緑の濃い日の香りを、雪の降る夜にそっと呼び出す。季節を束ねて保存し、あとで味わう知恵です。日本でも、白樺やクロモジの枝で、同じ楽しみをこしらえることができます。(白樺の話は、こちら。)

日本の土曜に、移植してみる

この伝統は、そのまま日本の週末に持ち込めます。土曜の夕方、自宅サウナを温め始める。入って、休んで、また入って。上がったら、焼きたてのソーセージと冷たい一杯。翌朝の日曜は、驚くほど穏やかに始まります。大事なのは「土曜の夜は予定を入れない」と決めてしまうこと。サウナが習慣の錨になって、一週間に潮の満ち引きのようなリズムが生まれます(頻度の話)。

あなたの家に、土曜サウナを

岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、家庭に土曜サウナの伝統を持ち込むお手伝いをしています。まずは店で、フィンランドの週末の話からどうぞ。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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